従来治療薬には弱点が 「逆流性食道炎」克服3つのポイント

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 胃から食道に胃酸が逆流することでさまざまな不快症状が起こる「逆流性食道炎(胃食道逆流症)」。年々増加しており、一般的に、健診施設の患者の10%前後にこの疾患がみられることが報告されている。治療を受けても症状が十分に改善されない人も多かったが、昨年末、世界初の新薬が承認され、状況が変わりそうだ。

 逆流性食道炎は、QOL(生活の質)を著しく下げる疾患だ。

 兵庫医科大学内科学消化管科・三輪洋人主任教授はこう言う。

「QOLの程度を示すスコアで見ると、未治療の逆流性食道炎は、軽症の心不全、狭心症よりもずっと数値が低い。胸焼けが特につらく、“死を予感する症状”と表現する患者さんもいます」

 逆流性食道炎の治療は「まずPPI、駄目でもPPI、それで駄目ならもっとPPI」がこれまでの原則だった。PPIとは、胃酸の分泌を抑制する胃酸分泌抑制剤の一種だ。

「PPIで治療を行い、十分に効かなければ、内視鏡でほかの疾患を調べ、やはり逆流性食道炎だと判断すると、PPIの量や投与する回数を増やす。症状が続けば、さらに量や回数を増やします」

 しかし残念ながら、逆流性食道炎の治療を受けているのに、苦しみが続く人が少なくない。三輪教授が2010年にPPI服用中の逆流性食道炎の患者117人の調査を行ったところ、患者の約3人に2人が、週1回以上、逆流性食道炎の症状が出ていた。「毎日」と答える人も12%いた。

「PPIは最大効果を得るまでに3~5日間かかる上、夜間の酸分泌を十分に抑制できません。また、遺伝的に持つある酵素の働きで薬の代謝スピードが異なり、PPIが非常によく効く人とそうでない人とがいる。そんな3つの弱点があるのです」

■従来品をカバーした新薬は治癒率向上

 では、逆流性食道炎の苦しみから逃れるには、何を知っておくべきか?

 まずは、最近発売された新薬「P─CAB」だ。

「これまでにない機序を持つPPIで、既存の薬の3つの弱点をクリアしています」

 開発した武田薬品工業によると、逆流性食道炎のグレードC・D(A~Dの4段階に分類。Aが軽く、Dが重い)に対しての、既存のPPIと新薬の比較試験では、投与2週間目で既存の治癒率が63%、新薬が88%。4週間目では既存80%、新薬96%という開きが出た。

「既存の薬で適切な治療を行ったのに効果が見られなければ、新薬を使うという手もあります」

 次に、減量や生活習慣の改善をきちんと行っているかどうか。

「逆流性食道炎は体形や胃の形が発症に関係しています。肥満、胃酸の逆流を起こしやすい早食い、食べてすぐ寝るなどの習慣を改善しなくては何度も再発します。薬だけでは、逆流性食道炎の症状を完全になくすことはできないのです」

 さらに、逆流性食道炎は患者数が多いため、必ずしも専門医に診てもらっているとは限らない。それゆえ、適切な治療が行われていないこともある。前出の減量や生活習慣改善の指導もそうだが、薬を正しく投与されていない可能性もある。

「最初のPPIの量や回数で効きが悪ければ、量や回数を増やしているか? それがないために、症状が改善していない患者さんもいます」

 最初の治療は専門医でなくても問題ないが、効果が見られなければ専門医を受診する。もしかしたら、胸焼けは逆流性食道炎によるものではなく、食道がんなどが原因かもしれない。

 打つ手を間違えてはいけない。

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