医療数字のカラクリ

パーセンタイルで見えてくるもの

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 これまでに平均値、中央値について説明しました。今回はさらに進んで、もうひとつの指標を紹介しましょう。中央値というのは、データを小さいものから順番に並べたときに真ん中に位置するデータだと説明しました。今回はそれをさらに進めて、全体のデータの10%とか25%、あるいは75%、90%などの位置を考えてみます。

 たとえば「かぜの患者さんの10%が治るのは何日目か」を例に挙げましょう。仮にその日数が1日であれば、10%の人が治る日数である1日のことを「10パーセンタイル」と呼びます。25%の人が治るのが2日であれば、2日が「25パーセンタイル」、75%の人が治るのが2週間であれば、14日が「75パーセンタイル」、90%の人が3週間で治るのであれば21日が「90パーセンタイル」というわけです。

「それが一体、どんな意味を持つのかわからない」という人もいるでしょうから、別の具体例を挙げて説明します。

 あなたが55歳で残っている歯の本数が20本だとします。これは同じ55歳100人を歯の多い順に並べて、75番目だった場合、あなたは「75パーセンタイル」ということになります。この意味は20本以上の人が75%いて、自分より多く歯が残っている人が圧倒的に多いというわけです。

 平均値、中央値、さらにはパーセンタイルといういろいろな指標でかぜの治癒期間を眺めてみると、さまざまなことが見えてきます。かぜの治癒期間が平均4日といわれているのに、11日間も治らないとびっくりします。しかし、かぜの治癒期間の90パーセンタイルが3週間と聞けば、少しは安心できるのではないでしょうか。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。