一定テンポ、フレーズ繰り返し…音楽で自律神経を整える

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 自律神経について、名前は知っているがよく分からないという人が多いのではないか? 「ライフラインの基本」と指摘するのは、自律神経研究の第一人者、順天堂大学医学部の小林弘幸教授。自身も実践している自律神経調整法を聞いた。

■自律神経の乱れが不調につながる

「自律神経は、心臓、腸、胃、血管などの臓器をコントロールする大切な神経。だから、自律神経が乱れると動悸、下痢、胃痛、疲労感、不眠などさまざまな不調が生じます」

 病院で不調の原因が分からない時、「自律神経失調症」と診断されることがよくある。患者側からすると、正直、原因が分からないことを「自律神経失調症」という病名でごまかされているような不信感があるが、「あながち間違えていない。現代人は不規則な生活習慣によって、強弱の差はあれ、自律神経が乱れている人がほとんど」だという。

 自律神経は、昼間など緊張状態で優位になる交感神経と、リラックス状態で優位になる副交感神経のバランスで成り立っている。心拍数や血圧は交感神経が優位の時に上がり、副交感神経が優位の時に下がる。これら2つの神経は、本来はシーソーのように交互に働くが、現代は前述のとおり、どちらか一方が優位な時間が長くなっている。特に、交感神経が優位になる時間が長い「頑張りすぎるタイプ」が圧倒的に多い。

■音楽を聴いてリラックス

 ここから逃れるにはどうすればいいか? 小林教授がイチ押しするのは「音楽」だ。

「外部から受けた情報によって生じる喜怒哀楽の感情で、自律神経をつかさどる脳の視床下部が作用します。そして、体が働き続けていれば“休め”、休んでいれば“働け”というサインを送り、自律神経のバランスを整えます。人間の脳は、音楽を本能的に『快』と感じるようにプログラムされています。つまり、音楽を聴けば、視床下部への刺激になり、自律神経の調整を促してくれるのです」

 小林教授は、CDで音楽を30分間聴いた後、自律神経の状態がどうなるかを測定した。すると、個人差はあるものの、交感神経と副交感神経の活動度が増し、バランスも改善。音楽を聴いた後、「リラックスした」「非常に心が落ち着いた」「元気が出た」という声が相次いだ。

「クラシックでもロックでもポップスでもジャンルは好みでいいですが、一定のリズムを保ち、同じフレーズを何度か繰り返す曲がベターです。音楽がなければ、メトロノームでもいい。さらに、初めて聴く曲をおすすめします。よく知っている曲では、それにまつわる思い出がよみがえり、時に交感神経のバランスを整えるのを邪魔することがある」

 小林教授は、1日のうち1~2時間、パソコンも携帯電話もいじらず、面会などのアポイントなども入れない“何もしない時間”を設け、音楽を聴いてぼーっとして過ごすようにしているという。それによって、自律神経をうまくコントロールするように心掛けている。

 これは、30代半ばから10年ほど、多忙とストレスが重なり、体調不良を起こしたことがきっかけで始めた習慣だ。

「時間に追われる生活は不測の事態に遭遇することも増え、焦ったりドキドキすることにつながる。これは交感神経を優位にしてしまいます。それより、時間をコントロールする生活を心掛ければ、気持ちを平穏に保て、交感神経が過剰に優位になりません」

 2016年は、これでいこう。

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