昨年秋に発行された「天文犯罪医学」という雑誌に、「新月の夜には犯罪が多い」という論文が発表されました。皆さんはこれをどう考えるでしょうか。
“新月で暗いため犯罪が起きやすいのかも”“街路灯を増やして明るくして犯罪を減らさないと”などと考えるかもしれません。
しかしこの論文を調べてみると、そもそも新月に犯罪が多いというのも怪しいものです。
たとえば満月の時と比べたデータと比較はされておらず、「新月には犯罪が多い」という先入観のもとに、新月の時だけパトロールして検挙された犯罪件数だけを調べているのです。
少なくとも毎日パトロールして、そのうえで新月とそれ以外の時で犯罪件数を比べるということをしなければ、新月と犯罪件数の増加が関係しているということすらわかりません。「街を明るくすれば犯罪が減る」というのもハッキリしません。
このことを病気の治療に当てはめてみましょう。たとえば「赤身の肉を多く食べる人はがんが多い」という研究結果は、「新月の夜に犯罪が多い」というのに対応しています。さらに「赤身の肉をやめるとがんが減るか」については、この結果からは全く何とも言えません。
それなのに、「赤身の肉を多く食べる人はがんが多い」なんて聞くと、すぐに「赤身の肉をやめてがんを予防できる」などと思ってしまう人が多いのではないでしょうか。しかし、ことはそんなに単純ではないのです。
実は、「天文犯罪医学」なんて雑誌はありません。私の創作です。しかし案外だまされた読者の方も多いのではないでしょうか。私はウソであることをバラしましたが、真実を伏せて延々ウソをつき続けている人たちも多いのです。気を付けましょう。
医療数字のカラクリ