帯状疱疹治療薬「ソリブジン」は、第1相臨床試験において健常者での安全性が確かめられたあと、初期第2相臨床試験で帯状疱疹患者を対象として1人の死亡者を出しました。にもかかわらず、ソリブジンと死亡の因果関係不明のまま放置され、臨床試験が続けられました。
そのあと後期第2相臨床試験が行われましたが、治療効果について偽薬と明確な差が出ませんでした。ところが、続く第3相臨床試験で「有効」「安全」とされ、保険薬として臨床の現場で抗がん剤を使っている患者の帯状疱疹に投与され、多くの死亡者を出すこととなりました。これが「ソリブジン事件」の事後的に確認できる大ざっぱな流れです。
しかし、治験段階では明らかにならなかった情報がその後も次々と判明します。実は治験以前に、ソリブジンと「5-FU」という抗がん剤との間の相互作用によって実験動物が死亡するという研究結果の存在が今では明らかになっています。さらに、後期第2相臨床試験ではソリブジン服用者で2人の死亡例があったこともわかりました。この第2相試験では死亡を報告する欄がなく、この2人の死亡者が報告されていなかったのです。
動物実験での抗がん剤との併用による危険、第2相臨床試験での計3人の死亡、さらには痛みに対するあいまいな治療効果。以上を考慮すれば、このまま保険薬としての認可には相当慎重でなければならなかったはずです。
動物実験、第1相の治験、2つの第2相の治験、さらには第3相の治験と、いくつもの段階があるというだけでは、こうした事件の歯止めにはならないことを示しています。
医療数字のカラクリ