「パーキンソン病」 上手に付き合うポイントと最新治療法

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 パーキンソン病は、脳の黒質でドーパミン神経細胞が減少する病気。これまでは「脳だけの病気」と考えられてきたが、近年、「全身の病気」だと分かってきた。

 症状は、手足の震え、筋肉のこわばり、全身の動作が遅くなる、倒れやすいといった「運動症状」。さらに、便秘、レム睡眠行動異常症、嗅覚低下、立ちくらみなどのさまざまな「非運動症状」が出る。

 東京慈恵会医大葛飾医療センター神経内科・鈴木正彦診療部長は、パーキンソン病と上手に付き合っていくための要点を次のように挙げる。

(1)治療は「症状に応じて」「きめ細やかに」

 パーキンソン病治療薬は、発症して間もない時期にはよく効くが、発症後5~6年経過するころには、効果にバラツキが生じてくる。

「服薬後、数時間で薬の効果が切れて動けなくなる『ウエアリングオフ』と、自分の意思とは無関係に体が自然に動く『ジスキネジア』を生じるようになり、どう対処するかが重要です」

 患者が最も困っている症状に対し、服薬量や服薬回数を適宜調整する。最近では貼り薬や自己注射薬なども登場しているので、生活環境を勘案しながら適正に使用する。

「薬の量が増えれば副作用も増します。いかに薬効は高く、副作用は少なくするか。専門医とのコミュニケーションが重要となりますので、普段、困ったことは受診時にすぐ伝えられるよう書き出しておくとよい」

 症状や進行度は十人十色。パーキンソン病は進行性の病気であるため、症状に応じて、細かく薬剤を調整していかなくてはならない。病気に精通した専門医と上手に付き合う姿勢も必要だ。

(2)便秘のコントロールとリハビリ

 今、治療のポイントになっているのが便秘のコントロールだ。便秘は高度になると薬の吸収率が下がり、症状の悪化につながることもある。

「薬の効果を十分発揮させるためにも、四肢・体幹のストレッチなど毎日の自己リハビリは欠かせません。積極的に、食事の前に1日3回はぜひ実践していただきたい」

 徹底して行えば、パーキンソン病の進行期、すなわち薬の効き目が悪くなる発症10年目以降も、健常者と同じまではいかないにしろ、杖なしでハイキングに行ったり、ゴルフを楽しんだりすることは十分可能だ。

「パーキンソン病薬は飛躍的に向上しています。それだけに、自己判断で服薬調整しないようにしましょう。かかりつけ医と専門医を上手に利用して、病気への良好な対応を継続することが非常に大切。パーキンソン病以外の病気を抱えている方も少なくなく、そういう意味でも、患者、かかりつけ医、専門医のトライアングルを意識すべき」

■「脳深部刺激療法」と「ビタミンD投与」に大きな可能性

 現在、パーキンソン病の最新治療で注目をされているものが2つある。

 ひとつは「脳深部刺激療法」。局所麻酔を用いた簡単な手術で脳の運動に関わる部分に電極を留置し、弱い電流で刺激を与える。これで薬の量を減らせる患者も多い。

 もうひとつは、ビタミンDの投与だ。

 パーキンソン病患者は健康な人に比べてビタミンDの血中濃度が著しく低く、その濃度が低いほど重症度が高いことが指摘されている。鈴木部長は同院の患者の協力を得て臨床研究を実施。二重盲検ランダム化比較試験の結果、1年後に症状の進行が抑制された患者の割合は、ビタミンD服用群で6割に達した。

 ただし、ビタミンDがパーキンソン病の進行を抑制できる可能性は示唆されたものの、「今後の国内外の研究結果が待たれる状況」と鈴木部長。安易に手を出していい治療では「まだ」ない。

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