千葉県で集団感染発生 「はしか」からどう身を守る?

人が大勢集まるところは要注意
人が大勢集まるところは要注意(C)日刊ゲンダイ

 昨年3月、WHO(世界保健機関)から「排除状態にある」と認定され、撲滅も時間の問題と思われていた麻疹(=はしか)が、千葉県内で流行の兆しを見せている。松戸市で0歳から33歳までの男女10人の集団感染が確認されているほか、麻疹に感染していた19歳の男性が8月14日に幕張メッセで開かれた人気外国人アーティストのライブに訪れていたことが判明。医療機関は感染拡大を警戒している。麻疹の予防と発症時の対策について、弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。

「麻疹は、空気感染、飛沫感染、接触感染などさまざまな経路で感染します。感染力はインフルエンザの数倍ともいわれ、1人の患者が平均12~18人に感染させることが知られています。免疫を持たない人がウイルスに触れると、ほぼ100%感染します。感染後10日前後が潜伏期間で、せき、鼻水などのカゼに似た症状が2~4日続き、その後、40度近い高熱が出て全身に発疹が現れます」

 その強力な感染力によって、たくさんの人が集まるコンサートや学校で集団感染するケースが多い。大流行した2007年は4月1日~7月21日に厚労省に報告された学級閉鎖、臨時休校した高校、大学はそれぞれ73校、83校に上った。

 2008年に沖縄のライブコンサートで発生した集団感染では、県内在住の20歳の男性が発熱・発疹がある状態でライブ会場に赴き、会場にいた13人が感染。他に会社の同僚と病院、近所の住人3人が感染した。その後、ライブ会場にいた1人が別のライブ会場で3人を、2人が家族ら3人に感染させ、計22人が麻疹を発症している。

■過去にワクチンを打っていても安心できず

 麻疹にかかったら、解熱剤を飲むなどして回復を待つほか手はない。

 怖いのは中耳炎、心筋炎、肺炎、脳炎などの合併症を発症する場合があること。幼児の中には「亜急性硬化性全脳炎」という進行性で致死的な中枢神経疾患を起こすこともある。

 ちなみに、日本では年間50人程度の子供がはしかで亡くなっている。

「それだけに予防法が大切なのですが、有効なのはワクチンだけです。感染者に接触した場合は、72時間以内にワクチンを接種すれば効果があるといわれています」

 中には「俺は過去に麻疹ワクチンを打っているから大丈夫」と思う人もいるだろうが、間違いだ。

「以前は“はしか(麻疹)、おたふくかぜ(ムンプス)、三日はしか(風疹)”は1度かかれば二度とかからない(終生免疫)と言われ、ワクチン接種も同様の免疫があると思われていました。ところが、感染を防ぐだけの抗体が得られるのは、ときどき流行して本物のウイルスと接触し続けたときだけです。そうでないと、免疫はどんどん低下していくのです」

 これは複数の国内外の研究で明らかになっており、孤島であるグリーンランドで麻疹ワクチンを接種した人の追跡調査をしたところ、5年後に95%だった抗体陽性者が16年後には43%まで減ったとのデータが報告されている。

「2006年から麻疹ワクチンの2回接種は公費が可能になりました。しかし、それ以前の人は接種していても1回です。1回しか接種していない人は、その後、免疫が下がって発症する人もいます。中にはMMR(麻疹・風疹・おたふくかぜの3種混合)ワクチンによるとみられる事故が続き、任意接種が中止になった影響から、麻疹ワクチンを打っていない人もいらっしゃいます。また、MR(麻疹・風疹)ワクチンを1歳時に打っていても、6歳時に打たない人もいる。最近、高校生や大学生、成人以降の人に麻疹が多いのはこうした理由です。麻疹を子供の病気と思ってはいけません」

 ちなみに、麻疹が疑われた場合は、病院に行く前に必ず電話をすること。病院にいる妊婦や幼児の命を危険にさらさないよう、注意することも大切だ。

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