モノ忘れ脱出 完全マニュアル

<3>楽観的になると右脳が刺激され脳の神経細胞が増える

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 脳の老化をストップさせ、物忘れなどを減らすにはどうすればいいでしょうか? 非常に重要なのは楽観的であることです。楽観的になると右脳が刺激され、脳の神経細胞が増え、脳が若返ることが研究で明らかになっているのです。重要なのは、楽観的でいることによって、ストレスを早く解消できる点。ストレスが長引くと、記憶に関係する脳の海馬の神経細胞が破壊されることもわかっています。

 しかし、ストレス源になる失敗や危機的状況などを回避するのは困難でしょう。もし失敗した時、反省だけしたり、くよくよ悩んでいるのでは、脳にダメージを与えます。むしろそれを良いチャンスと捉え、チャレンジする。発想の転換によって視点を切り替える。

 実はこれは、日常生活の中で意識することなく使っている記憶の装置「ワーキングメモリー」にも関係する脳の前頭前野を働かせるということになります。

 私の経験をお話ししましょう。ある事情で1カ月間、車に乗ることができなくなってしまいました。私は普段は東京・あきる野市の「米山医院」で診療をし、週に1度、東京都内の事務所に車で行きます。それができなくなってしまったのですから、普通なら「さて、どうしようか」と悩むかもしれません。ちなみに、電車で行くとなると、あまり交通の便の良いところに住んでいるわけではないので、時間的にも肉体的にも結構大変です。

 ストレスは脳に悪い。私は瞬時に意識を切り替えました。1カ月間事務所に行くことをやめ、代わりに前からやろうと思っていても時間がなくてできずにいたことにチャレンジすることにしたのです。プランを立て、検証する時間の楽しかったこと! 車に乗れない不都合さはすっかり忘れていました。“やろうと思っていたこと”は、今まで経験していないことでもあったので、脳への刺激にもなったと思います。

「もともと楽観的な性格じゃないから」と考える人もいるでしょう。しかし、発想の転換はだれにでもできるのではないでしょうか?

 次回は、物忘れを一瞬で回避する4つの方法を紹介しましょう。

米山公啓

米山公啓

作家、医学博士。専門は神経内科。脳に関する著書多数。

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