続々登場の「合剤」 知っておきたい知識を専門家が解説

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 何種類かの薬の成分をひとつの薬に配合した「合剤」(配合剤)と呼ばれる薬がある。毎日たくさんの薬を飲んでいる人にとって、薬の数を減らせるのはありがたいが、他にもメリットはあるのか。

 合剤は作用や効果が異なる薬をひとつにまとめているため、薬の投与量を調整することが難しい。病気が急性期で目まぐるしく変わる症状に応じて使う薬を変える場合には向いていない。また、いくつも病気を抱えている人は、病気によってNGな成分が配合されている合剤もあることから、必要な効果が得られなかったり、副作用を起こすリスクもある。

 しかし、「薬の数が多すぎて飲む気をなくす」「それぞれ飲むタイミングが違うので、混乱してわからなくなってしまう」といった人にとっては、合剤を使うことで服用する薬の数を減らせるのはメリットといえる。

 合剤には、降圧剤、コレステロール降下薬、血糖降下薬など慢性疾患の薬が多いが、中でも患者にとってメリットが大きいのは緑内障の治療に使われる点眼薬の合剤だという。岡山大学病院薬剤部の神崎浩孝氏は言う。

「緑内障の治療は、まず薬物治療を行うのが一般的です。眼圧を下げて視神経の障害を食い止めるために点眼薬が使われます。最初は1種類から始め、十分な効果が得られなければ2種類、3種類と増やして組み合わせていくことが多い。その際、点眼薬をさす順番や点眼する間隔が重要になります。順序が変わると効果が弱まってしまうケースがあるからです。また、5分以上の間隔をあけてからささないと、2つ目、3つ目の点眼薬によって、その前の点眼薬が流されてしまうのです」

 しかし、間隔をあけて3種類の点眼薬をさすとなると、1回分で20分かかることになる。結膜炎にかかり、緑内障の点眼薬に加えて抗菌やステロイドの点眼薬が処方され、5種類以上の点眼薬をささなければならない患者もいる。

「緑内障の点眼薬の合剤は、順序に混乱したり、間隔をあける手間を解消するメリットがあります。複数の点眼薬をひとつにまとめると効果が弱まってしまうのではないかと不安に思う患者さんもいますが、面倒だからとさし忘れたり、点眼そのものをやめてしまうよりプラスです。また、緑内障の点眼薬は過剰投与がいちばんの問題です。さしすぎると効果がどんどん弱まってしまいます。その点、合剤なら1滴さすだけで済むわけですから、患者さんにとっては大きなメリットですし、医療者側の心配も減らせるのです」(神崎氏)

■自己判断での安易な服用はさけるべき

 条件が当てはまる人にとっては、合剤は検討する価値があるといえる。

 もっとも、合剤が続々と登場する背景には、病院側の事情もあるという。

「患者以上に病院側に合剤を処方するメリットがあるのです。平成28年度の診療報酬改定により、6種類以上の内服薬を服用している患者に対して2種類以上の減薬を行った場合、『薬剤総合評価調整管理料』を算定できるようになりました。これは、合剤に変更しても『1減』とカウントされるため、病院側は合剤に切り替えると“儲かる”ということになります」(都内薬局の薬剤師)

 合剤について、知っておくべき知識はほかにもある。

「病院で処方される薬はほとんどが単剤ですが、ドラッグストアなどで購入できる市販薬はほとんどが合剤です。たとえば総合感冒薬には、解熱鎮痛剤、せき止め、鼻水止めといった複数の薬が配合されています。解熱鎮痛剤の中には、胃を保護する成分が配合されているものも多くあります。いくつも病気を抱えている人は、他の薬との飲み合わせや副作用のリスクを考えることが大切です」(神崎氏)

 また、漢方薬はいくつかの生薬を組み合わせた“合剤”でなければ効果が表れない。しかも、組み合わせる種類が少ないほど効き目が強くなるという。

 つまり、複数の生薬を組み合わせることによる相互作用によって、薬の効果を変えたり、副作用を軽減させている。自己判断で安易に服用するのはやめた方がいい。

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