役に立つオモシロ医学論文

「買い物難民」は肉、野菜、果物の摂取不足に陥る

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 当たり前ですが、バランスの良い食習慣を維持するためには、野菜、肉、魚、果物など多様な食材をお店で購入してくる必要があります。居住している地域によっては、食料品の買い物に不便や苦労を感じることも多いでしょう。特にご高齢の方では、日常における行動範囲が限られていることもあり、食料品などの買い物が困難な状況に置かれている人も少なくないはずです。

 そんな中、買い物の不便さと、肉・魚や野菜・果物の摂取状況との関連を検討した観察研究の論文が「日本疫学会誌」(2017年11月号)に掲載されました。

 この研究では全国31市町村(12道府県)に在住の65歳以上の高齢者10万2869人が対象となっています。研究参加者に対して「家から1キロ以内に新鮮な果物や野菜を売っているお店はありますか?」という質問をして、「多い」「いくつかある」「少ない」「ない」「わからない」のいずれかで回答してもらっています。

「多い」「いくつかある」と回答した人を買い物に便利なグループ、「少ない」「なし」「わからない」と回答した人を買い物に不便なグループとし、この2つのグループで食品の摂取不足(1日1回未満の摂取)を比較しました。

 その結果、買い物に便利な人と比べると、不便な人では野菜・果物の摂取不足が男性で18%、女性で26%多いことが分かりました。また、肉・魚の摂取不足についても同様に男性で15%、女性で17%多いという結果になっています。

 この研究では、買い物が不便という地理的な環境が、食品の摂取不足と関連することが示されています。バランスの良い食習慣を維持するためには、こうした地理的な環境も十分に考慮する必要があります。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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