役に立つオモシロ医学論文

事故発生率に変化が 満月の夜にはバイクの運転に注意

満月の夜は注意!
満月の夜は注意!(C)日刊ゲンダイ

 夜空に浮かぶ月に不思議な魅力を感じる方も多いでしょう。月が人の生活に何らかの影響を与えている可能性はたびたび指摘されますが、過去には「月の満ち欠けと交通事故の関連性」を報告した文献もあります。

 満月の夜には運転者の注意が月に引き寄せられることで運転操作を誤り、それが原因で重大な事故につながっているのではないか。そんな仮説もあるそうです。

 実際、バイクの運転においては、道路わきに注意がそれるだけで事故リスクが増加するという報告があり、あながち軽視できない仮説ではあります。

 知覚に関する研究によれば、人の注意をそらす要因として、「視界に入る物体の大きさ」「明るさ」、そして「突然の出現」という3つの要素が挙げられるそうです。

 たとえば、建物の陰に隠れていた満月が、いきなり夜空にその姿をのぞかせたとき、バイク運転者の注意がそれ、重大な事故につながる可能性があるということかもしれません。

 2017年12月11日付の英国医師会誌電子版には、「満月とバイクの死亡事故の関連」を検討した観察研究の論文が掲載されています。

 この研究では、1975~2014年の40年間に、米国で発生した1万3029件のバイクによる死亡事故を解析しています。その結果、満月の夜における死亡事故の発生率は1夜間当たり9.10件、満月でない夜における死亡事故の発生率は1夜間当たり8.64件と、満月でない夜に比べて、満月の夜では5%、統計学的にも有意に死亡事故が多いことが示されました。ごくわずかなリスク上昇とはいえますが、満月の夜にバイクを運転する人はこうした危険性を意識して、より運転に集中する必要があるかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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