クスリと正しく付き合う

薬の適正使用は適切な製造と流通がなければ成り立たない

左が偽造品
左が偽造品(C)共同通信社

 2017年もあとわずかとなりましたが、今年は医薬品の“安全神話”が崩壊した年といっても過言ではないと思います。

 医薬品の製造・流通において、あってはならない事件が次々に起こりました。

 たとえば、「薬の詰め替え問題」が1月に発覚しました。1本153万円のC型肝炎治療薬のボトルに、安価なビタミン剤などを詰めた偽造薬が流通し、患者さんに渡ってしまったのです。

 安全で治療効果の高い薬を開発することは、製薬会社を含めたわれわれ医療従事者の務めですが、「安全な使用」のために安定した医薬品の流通を維持することも大切な役割といえます。薬の治療効果に関する臨床試験の成績(エビデンス)の数々は、「適切な製造・流通」と「適切な使用」があった上で初めて意味を成すものなのです。

 製造に関する問題としては、「アセトアミノフェン」(AA)という解熱鎮痛薬の原薬産地偽装事件が6月に発覚しました。国内最大手のAA原薬メーカーが、安価な中国産の原薬を自社で製造した原薬に混ぜて水増しし、自社製品として出荷していたのです。

 この事件が発覚したことでAAの流通がストップしたため、一時的にAAの使用を制限した病院もありました。AAは小児に対する解熱鎮痛薬として用いられ、小児科領域では治療上欠かすことのできない薬です。流通が再開するまでは当院でもひやひやしました。

 決して中国産が悪いといっているのではありません。ジェネリック医薬品には中国産原薬を使用しているメーカーもたくさんありますし、臨床試験によって効果は同様と示された上で使われています。

 しかし、「安心で安全な医療を患者に提供する」という意味において、偽装や虚偽申告は許されない行為です。製薬会社をはじめとしたわれわれ医療従事者は、改めて襟を正す必要があります。

 患者さんができる自衛策は多くありませんが、いつも飲んでいる薬と色や形が違っている場合、すぐに医師や薬剤師に相談してください。

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