災害に見舞われたとき、病院も薬局も近くになく、移動もままならない場合、必要な薬を入手することが難しくなってしまうケースは容易に想像できます。しかし、災害によって直接的に薬が入手できないという状況ではないのに、薬が不足して安定的に得られなくなってしまうかもしれないケースもあります。
薬は、原薬メーカー↓製造業者↓卸業者↓医師(処方)↓薬局↓患者というプロセスで患者の手元に届きます。それぞれに「流通」があり、それぞれが安定しているからこそ、患者は安心して薬を手にすることができるのです。
しかし、この流通のどこか1つがストップしただけで、薬の安定供給はできなくなってしまいます。
たとえば、昨年9月にプエルトリコで起きた大型ハリケーンによって製薬工場が壊滅的な被害を受け、高血圧や慢性心不全の治療に使われるセララや、抗菌薬のジスロマックといった薬が一時製造できない状態となりました。
また、原料や製造工程で動植物を用いる薬品(漢方薬、乾燥甲状腺末、インフルエンザワクチンなど)は、想定外に生産量が不安定になることがあります。
医療経済も薬の製造に大きく影響します。ジェネリック医薬品への移行が進む昨今、薬価がどんどん下がることで、製造業者の利益が上がらないことで製造を維持できず、製造を中止せざるを得なくなった医薬品も多数あります。薬を安く買うことで安定供給が保たれなくなり、最終的には患者に不利益があるというのは、適正な医療の在り方なのでしょうか。
こうした医薬品流通の不安定は、いくら想定していても個人のレベルではどうしようもないことと言えます。
処方箋医薬品は家庭に備蓄できませんし、個人的な授受や売買は法律で罰せられます。
だからこそ、「医療費(薬価)」と「医薬品の安定供給」について国がもっとしっかり考え、安定して薬が患者に届く体制を維持構築していって欲しいと強く感じます。
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