高数値はLDLか中性脂肪か 「脂質異常症」治療の違いを知る

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高める脂質異常症は症状がなく、進行度合いが分かりづらい。慈恵医大病院糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也准教授に知っておくべきことを聞いた。

「LDL(悪玉)コレステロール値が高い」「中性脂肪値が高い」「HDL(善玉)コレステロール値が低い」のどれかに該当すれば、脂質異常症と診断される。

「特にLDLコレステロールが高いか、中性脂肪が高いかで、治療の対策が変わります。自分がどのタイプかを知らなくてはなりません」

■LDLコレステロール値が高い
(空腹時採血の値が140(㎎/デシリットル)以上であれば、脂質異常症)

「LDLコレステロールは食事の影響を強く受けません。遺伝的要素が強く、両親のどちらかの値が高ければ、自分もそうなりやすいと考えた方がよい」

 食事の改善で数値が下がりにくいということは、薬に頼るしかない。スタチンは横紋筋融解症などの副作用があるため、服用後2~4週間後の血液検査で問題がないかどうかを調べ、そのまま継続か、違う薬に替えるかを検討する。

 140が境目だが、本当に危険を感じた方がいいのは180以上。

「心筋梗塞、狭心症の冠動脈疾患の発症リスクが極めて高い。スタチンの投薬治療を始めるべき。スタチンには2種類の強さがあり、強い方の薬が必要なケースも」

 140以上で180未満なら、中性脂肪が150以上かどうかに着目だ。

「コレステロールを細胞に運ぶLDLが小型化した『スモールデンスLDL』になり、血管壁に入りやすく、心筋梗塞を起こしやすい。LDLコレステロールが180までいかなくても、スタチンを投与すべきケースがあります」

■中性脂肪値が高い
(150以上が問題)

「LDLコレステロールと異なり、中性脂肪は食事の影響を強く受けます。食生活を改善すれば、すぐに下がります」

 これはもろ刃の剣。食事が元通りになれば、すぐに数値が上昇。検査で数値の低下が確認されても、それ以降、持続できているかは分からない。

「検査では空腹時の数値を調べますが、空腹時は低めなのに、食後に異常に高くなる人もいます」

 つまり、中性脂肪は食事内容や検査タイミングなどの条件で変動する。

「専門家は、中性脂肪とHDLコレステロールの両方を見ます。中性脂肪が高いとHDLコレステロールが低くなり、中性脂肪が下がるとHDLコレステロールが高くなりやすい」

 中性脂肪が下がっていても、HDLコレステロールが前回と比べて上昇していなければ、中性脂肪の低下は一時的なもの。食生活改善や運動を継続できず、中性脂肪のコントロールが難しい人は、フィブラートという薬を使うことになる。

「スタチンとフィブラートの併用は、横紋筋融解症のリスクをより高めるといわれています。LDLコレステロール、中性脂肪両方が高い人は、スタチンを優先して使い、食生活改善と運動で中性脂肪を下げてもらうようにします。ただ、うまくいかなければ、2つの薬を使います」

 医師の管理のもとに薬を投与し、副作用の気配が見られたらすぐに対処する。薬を飲まないリスク(心筋梗塞、脳梗塞)より、飲むリスクの方が小さい。

 なお女性は、閉経以降はLDLコレステロールも中性脂肪も上昇しやすい。

 閉経前に測定したきり、という人は改めて検査を受けるべきだ。

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