無菌のガラス部屋で生活13年…スペイン人女性の“究極の目標”

無菌状態のガラスの部屋の中で暮らすムニョスさん
無菌状態のガラスの部屋の中で暮らすムニョスさん(本人のフェイスブックから)

「重大な病気で困っています」

 4日付の自身のフェイスブックでもそう訴えたフアナ・ムニョスさん(53)。

 家族と抱き合う。普通の人にとっては当たり前のことだろうが、スペイン南部アンダルシア州カディスに住むフアナさんにとっては人生における“究極の目標”だ。

 フアナさんは13年前から自宅に設置した無菌状態のガラスの部屋の中で暮らしているという。多種化学物質過敏状態(MCS)など4つの“致命的な病気”を抱え、その中で暮らすしか選択肢がないのだ。

 地元紙「アンダルシア・インフォルマシオン」などの過去の報道によると、フアナさんにとって最もつらいのは、あらゆる化学物質に致命的な過剰反応を起こすため、2人の息子や夫と抱き合える機会が年にたった2回しかないこと。それも数日間にわたる徹底的な除菌の手続きを経てからだという。

 フアナさんが最初にMCSの反応を示したのは29年前。夫が庭に植えたジャガイモに触れると、急に唇や目の周りがはれ始め、ついには体中が「モンスターのようになった」という。

 その時は、医師からステロイドを処方されて退院したが、その後、何らかの化学物質に触れるたびに、吐き気、慢性疲労、皮膚のかゆみ、呼吸困難などのアレルギー反応に苦しむようになった。

 フアナさんは「今にして思えば、あのジャガイモには、数年後に禁止された農薬が使われていました。あの殺虫剤が引き金になって、化学物質過敏症になったと確信しています」。しかしフアナさんは農薬メーカーから訴訟を起こされたくないとして、殺虫剤の名前を明らかにしなかったという。

 病苦にさいなまれるフアナさんの生きる目標は、世間のMCSに対する認知度を高め、自分と同じような人びとの状況を少しでも改善することだ。また、フアナさんは最近になって、MCSの発作を抑える特殊なフィルターを持つマスクの開発を援助するキャンペーンを始めた。名称は「エル・アブラソ(抱擁)」。フアナさんの究極の目標だ。

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