Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

子宮頸がんが再々発 古村比呂さんが語った「共存」の真意

古村比呂さん
古村比呂さん(C)日刊ゲンダイ

 がんになると、闘病生活がクローズアップされます。前向きに治療に取り組む姿勢は、素晴らしいものです。しかし、ガムシャラになり過ぎて、冷静さを失うような“闘病”は考えものでしょう。その点、女優・古村比呂さん(52)の考え方は参考になります。

「がんと闘うというよりは共存していく気持ちが強い」

 今月2日のラジオ番組でそう語ったのです。

 古村さんは6年前に子宮頚がんが発覚。幸い早期で手術で克服されたのですが、昨年3月に再発し、11月には肺とリンパ節に再々発しています。3度目のがんは、決して喜ばしいものではないでしょう。

 今年1月からは3週間に1回のペースで合計6回の抗がん剤治療をスタート。その副作用で、髪の毛が抜け落ち、「今は1割残っているくらい」だそうですが、4日のイベントには、ウィッグを着けて登場。「私にできることは、あるがままの姿をお伝えすること」と元気に語っていた姿が報じられています。

 そういう中での「共存発言」です。番組では、同居する子供のサポートについても触れていました。「(子供が)いろいろ助けてくれますし、頼もしいですね。しんどいなというときも、『しんどい? そんなときもあるよね』と流してくれます」と子供に勇気づけられている様子がうかがえるでしょう。

■迷ったらやめておく

「力むと疲れてしまう。いつも力を入れてファイティングポーズを取るのはつらい」

 苦しい再発を乗り越えてきたことで、力の抜き方を覚えたのでしょう。それが、「共存」につながったと思います。

 なぜ、それが大切かというと、「迷ったら、やめておく」が、がん治療の鉄則だと思うからなのです。

 がん患者は、病気を克服しようという気持ちが強く、次の治療、新しい治療を求めがちです。しかし、たとえば、抗がん剤治療を繰り返して、白血球が低下したような状態では、重篤な感染のリスクが高まります。とにかく無理をしないことが第一。白血球の減少は、多くの抗がん剤で見られる副作用ですから。

 進行がんで周りの臓器に転移すると、抗がん剤がよく使われますが、骨転移の痛みなら放射線が効果的。10人に1人が経験する脳転移にも、腫瘍にピンポイントで照射する定位放射線の有効性が分かっています。

 無理しないという意味では、治療の選択も重要です。抗がん剤より体への負担が軽い放射線を取り入れて、日常生活を送るのもいいでしょう。

 ちなみに女性にとって脱毛は精神的ショックが大きいですが、抗がん剤治療を終えて2カ月ほどで、髪の毛は生えてきます。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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