米国の裁判がきっかけ…やはりコーヒーは健康に悪いのか

インスタントよりレギュラーコーヒーが望ましい
インスタントよりレギュラーコーヒーが望ましい(C)日刊ゲンダイ

 コーヒーは健康に良いのか、悪いのか――。米国の裁判をきっかけに、侃々諤々の意見が飛び交っている。安心してコーヒーを飲んでもいいのだろうか。

■多くの大規模データは肯定的

「コーヒーの販売業者は発がんリスクに関する警告を表示しなければならない」

 今月初め、米カリフォルニア州の裁判所がこんな判断を下した。米国の教育研究団体(CERT)が起こした「コーヒーショップは、発がん性が指摘される化学物質のアクリルアミドについて消費者に明確かつ合理的な警告を表示してこなかった」という訴えに対する判断だ。米国の関連企業の一部は、すでに警告表示を行うことに合意しているという。

 たしかに、コーヒー豆を焙煎する過程で生じるアクリルアミドは、DNAに損傷を与えて発がん性リスクがあると指摘されている。

 国際がん研究機関も「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質(グループ2A)」と分類している。しかし一方で、最近はコーヒーにさまざまな健康効果があることも報告されている。消費者は何を信頼すればいいのか。「北品川藤クリニック」(東京・品川区)の石原藤樹院長は言う。

「コーヒーには、約1000種類もの化学物質が含まれています。アクリルアミドはそのひとつにすぎませんし、それだけを取り上げてコーヒーは体に良くないとするのは間違っています。あくまでもトータルで考えるべきです。これまで、適度なコーヒーの摂取が健康に有害であることを示す科学的な研究はありません。逆に近年は、他にコーヒーに含まれている物質による健康効果が相次いで報告されています」

 2017年に医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に掲載された研究によると、妊娠中と閉経後の女性の場合を除き、1日3~4杯コーヒーを飲む人は、それほど飲まない人と比較して、動脈硬化の病気で死亡するリスクが20%近く低下していた。また、がんになる人も20%弱少なくなっていて、総死亡のリスクも17%低下していた。

■「がんリスク軽減」の報告も

 45万人以上を対象にした大規模な健康調査でも、「コーヒーをたくさん飲む人の方が総死亡リスクが10%程度低下した」という結果が出ている。

 また、国立がん研究センターの調査では、コーヒーをほとんど飲まない人に比べ、毎日飲む人は肝臓がんの発生率が約半分になり、毎日5杯以上飲む人は約4分の1に抑えられることがわかっている。

 大腸がん、口腔咽頭がん、前立腺がんなどのリスクを軽減させるという報告もある。

 ほかにも、アルツハイマー型認知症になるリスクが最大62%も低下することや、2型糖尿病、パーキンソン病、脳卒中などの心血管系疾患の予防に効果があるという研究もある。

 コーヒーに含まれているカフェイン、クロロゲン酸(ポリフェノールの一種)、ニコチン酸類(ビタミンB)、NMP(N―メチルピリジニウムイオン)といった物質が、こうしたさまざまな健康効果に主体的に作用していると考えられ、世界中で研究されているのだ。

「中には、コーヒーの摂取が認知症や高齢女性の場合で骨粗しょう症のリスクをアップさせるのではないかという報告もあります。カフェインの過剰摂取は血圧の上昇や不整脈の原因になることも指摘されています。ただ、より信頼できる数多くの大規模研究を総合的に見てみると、『1日3~4杯なら健康効果がある』と考えていいでしょう。アクリルアミドは発がん性がおおよそ認められていますが、トータルで見ればコーヒーの適量な摂取は健康効果の方が大きいといえます」

 もちろん、健康を考えて飲むなら砂糖たっぷりはNG。缶コーヒーやインスタントコーヒーではなくレギュラーコーヒーを1日3~4杯が望ましい。

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