ストレスによる歯のトラブル

歯周病から糖尿病などへの全身病へ 認知症リスクは1.9倍増

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 40歳以上の8割以上の日本人がかかっていて、糖尿病や動脈硬化、心臓病や認知症の発症リスクを高めるといわれる歯周病。そのリスク要因のひとつがストレスだ。

 自由診療歯科医師で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長が言う。

「歯周病は歯を失うナンバーワンの病気です。歯垢(プラーク)の中の嫌気性細菌が歯肉に炎症を起こして歯肉をはがし、やがて歯を支える歯槽骨を溶かしていきます。初期は自覚症状が少なく、朝起きたときに口の中がネバネバする、歯磨きで出血する、口臭がある、歯肉がむずがゆい・痛い、歯が長くなった、前歯が出っ歯になる、歯と歯のすき間が大きくなったという人は注意が必要です」

 歯周病の原因となる歯垢は細菌の塊。1ミリグラムの中に約1億以上の細菌がすみつくという。

「口の中には約700種類の常在菌がすんでいます。普段はあまり悪さをしません。しかし、ストレスを抱えている人は食いしばりなどの歯ぎしりにより歯だけでなく歯肉や歯槽骨に負担を与え歯の根元にくさび状欠損ができたり、歯が折れたり、歯列が乱れたりします。そのため歯周病になりやすくなるのです」

 具体的には歯と歯の間や歯面に食べかすや汚れが残り、それをエサにする細菌がネバネバする物質を出して歯にくっつき、プラークをつくるという。

「それでも唾液の量が十分な人は唾液の持つ洗浄効果や殺菌効果によって歯周病をある程度防ぐことができます。ところが、ストレスがある人は唾液量が3割近く減少し、唾液もサラサラからネバネバに変わるために、より細菌が歯にくっつき、歯周病になりやすくなるのです」

 日本の研究では歯周病の人は健康な人と比べて糖尿病の発症リスクが1.28倍、脳梗塞のリスクが2.8倍、米国の研究で心臓病のリスクが2.48倍アップすると報告されている。

「歯周病菌が血管内に侵入して直接悪さをしたり、炎症の起きた歯周組織でつくられた炎症性サイトカインが血流を通じて心臓や血管に移動し、血管内皮細胞やアテローム性動脈硬化部分の免疫細胞を活性化して、心臓血管系の異常を引き起こすと考えられています」

 また、認知症との関係もわかってきていて、歯がまったくない人は、歯が20本以上残っている人に比べて1.9倍、認知症リスクがアップするという。

「歯を失う一番の病気が歯周病ですから、歯周病は認知症リスクを高めるということになります」

 現代人にとってのストレスの大多数は人間関係。忖度ばかりせずに、「これがオレの本性」と地金をさらけだし、“自分らしい時間”を長く保つ工夫をした方がいいかも。

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