健康な人では、肥満でも痩せでも心血管疾患と死亡のリスクが増していることが明らかにされています。
それでは、介護施設に入所しているなにがしかの病気や障害のある虚弱老人ではどうでしょうか。
この研究は、日本人の研究を含む20の研究を統合し、約2万人を解析していますが、BMIと死亡の関係は、18.5~25のグループのリスクを1とした場合、18.5未満で1.41倍死亡リスクの増加が認められていますが、25~30では0.85倍、30以上でも0.74倍と、むしろ死亡リスクが肥満で低下することが示されています。この傾向は日本人を含むアジアの研究に限った解析でも同様です。
疾患別に見ると、感染症による死亡が18.5未満で1.65倍リスクが高くなっています。25~30では0.77倍、35以上では0.93倍とリスクは低い傾向です。さらに心疾患や脳卒中も同様で、痩せでリスクが増し、肥満ではむしろリスクが低下傾向にあります。虚弱老人において肥満は、心疾患や脳卒中に対して、もはやリスクではなくなっています。
この分析では、痩せている人がすでに病気を持っているために死亡率が高いという因果の逆転の可能性が排除できていません。
しかし、因果関係は別にして、虚弱老人では痩せているほど死亡のリスクが高く、肥満の人は逆にリスクが低いという現実がこの結果によって示されています。
虚弱老人で肥満はむしろ健康のサインで、痩せのほうが死亡のリスクであることが明確なのです。
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