患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

「酒もたばこも全部駄目」ではモチベーションが保てない

平山瑞穂氏(06年撮影)
平山瑞穂氏(06年撮影)/(C)日刊ゲンダイ

 2003年、35歳の時に糖尿病を発症し、専門のクリニックにもう14年間も通っている。完治が見込めない糖尿病は、嫌でも何でも生涯自分について回る腐れ縁の相棒みたいなものだ。

 それだけに、この病気と付き合っていくには、専門医の掲げるお題目どおりの禁欲的なライフスタイルがままならない場合もある。それを痛感させられた出来事として、かかりつけとは別の一般の病院を風邪で受診した時のエピソードをご紹介しよう。

 問診票を通じて僕が糖尿病患者であり、にもかかわらず喫煙者だと知った医師は、「なんでやめないの?糖尿病でかかってる病院ではなんて言ってるの?」と厳しい調子で問いつめてきた。

 僕が糖尿病患者としてお世話になっているクリニックでは、患者の喫煙や飲酒に関しては割と寛容で、「控えた方がいい」程度の扱いにしている。遠慮がちにそれを伝えると、その医師は口を極めて罵りはじめた。

「そうやって患者を甘やかす町医者が俺は許せないんだよ。そういう医師は、はっきり言ってクズだから!」

 確かに糖尿病患者にとって、特に喫煙はご法度かもしれない。しかし僕の主治医は、糖尿病治療においてベテラン中のベテランである。長年の経験に基づき、あえてその辺の禁制を緩くしているのだと思う。

 治療のために人生の楽しみを全て無条件に奪うようなやり方では、患者のモチベーションを維持できないことをよく知っているからだ。

 そんな絶妙なさじ加減も理解せず、よく知りもしない医師を一方的にクズ呼ばわりするあんたのほうがよっぽどクズなんじゃないか。風邪でぐったりしてさえいなければ、怒鳴り返してしまっていたかもしれない。

 こういったケースは、糖尿病患者にとって決して珍しいものではないはず。一生の“相棒”と僕がどう付き合ってきたか、どうすればうまく付き合えるのかを、これからの連載でご紹介していきたいと思う。

平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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