味気なさ一切なし 楽々できる「減塩対策」2つのポイント

「好きな物」食べて減塩
「好きな物」食べて減塩(C)日刊ゲンダイ

 高血圧対策で減塩は避けて通れないが、味気なくて挫折する人も多い。聖光ケ丘病院(柏市)をはじめ複数の病院で減塩外来を開く渡辺尚彦医師(日本高血圧学会専門医)に、成功の秘訣を聞いた。

 高血圧や血圧が高めの人が目指すべき1日の塩分摂取量は6グラム未満。一般的なラーメンの塩分量は8・1グラム、スープを半分残しても4.6グラムなので、かなり少ない。

 ちなみに、日本人の1日当たりの平均食塩摂取量は、男性11.4グラム、女性9.6グラム。この数字から見ても、“1日6グラム未満実現”には、多大な努力が必要だとわかるだろう。

 そこで渡辺医師が考えたのが、「気が付いたら薄味嗜好になっていた」作戦だ。名付けて、「反復1週間減塩法」。

「考えるきっかけになったのは、中学・高校時代の勉強法です」

 読者も覚えがあるのではないか? 普段は好きに過ごしているが、試験前の1週間だけは連日教科書や参考書をめくり、勉強したことを。

「努力を長く続けられなくても、1週間だけなら頑張れます。学生時代は、その1週間の頑張りを試験ごとに繰り返すことで知識が身に付いていった。これと同じ方法を減塩指導でも取り入れたのです」

 つまり、月イチの受診日前の1週間だけ、徹底した減塩対策で1日6グラム未満、朝昼晩各2グラム未満を目指す。醤油と塩はNG、味噌汁、漬物など高塩分の食品は取らない。刺し身は醤油をつけず、ワサビやツマで。卵かけご飯も納豆も冷ややっこも醤油なし。この1週間が過ぎたら、塩分を気にせず、好きな物を食べていい。これを毎月繰り返す。

■降圧剤がやめられた患者も

「高塩分の食事から減塩の食事に替えて継続するのは困難。実際、私がそのような食事指導をしていた時は、一時は減塩に成功するものの、すぐに元通りになる患者さんが大半でした。しかし、反復1週間減塩法なら短期間なので続けられる。繰り返すうちに、薄味で満足する味覚を取り戻す。そして今度は減塩の1週間から従来の食生活に戻った時に“しょっぱくて食べづらい”と感じるようになるのです」

 前述の「気が付いたら薄味嗜好」となり、自発的に「外食をやめた」「醤油、塩をほとんど使わなくなった」「梅干し、明太子、味噌汁、ご飯の朝食から、塩分摂取量の少ないグラノーラなどシリアル食品に替えた」といった行動をとるようになる。

「10回くらいで、1日の塩分摂取量12~13グラムだった人が6グラム未満を達成し、継続できるようになります。過去には1日の塩分摂取量38グラムの人もいましたが、減塩に成功しました」

 渡辺医師の減塩外来のもうひとつの特徴は、蓄尿だ。患者は受診前の1日の尿を全てペットボトルにため、振って混ぜて尿検査用試験管2本に移し、提出。医療スタッフが尿から塩分量を算出し、記録する。それを見て渡辺医師が6~7グラムを「△」、8~9グラムを「×」、10~11グラムを「××」、12~14グラムを「×××」、一方で4~5グラムを「○」、2~3グラムを「◎」などと評価していく。

「食事の記録も付けてもらい、それを見ながらなぜ塩分量が増えたか、患者さんと考えていきます。蓄尿で摂取塩分量を可視化すると、患者さんは“これだけ取っているのか”としっかり自覚します」

 反復1週間減塩法と蓄尿を特徴とする減塩外来によって、降圧薬をやめられた患者もいる。蓄尿は自分ではできないが、反復1週間減塩法は試してみる価値ありだ。

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