なぜ痛むかに着目 長引く慢性痛はカテーテルと注射で治す

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 肩痛、膝痛、腰痛、股関節痛……。長く続く痛みに悩んでいるならカテーテルや注射を用いた治療を受けてみてはどうか? 新しい概念に基づく慢性痛治療だ。開発者のオクノクリニック、奥野祐次院長に聞いた。

 痛みで整形外科を受診したが、「レントゲンでは異常が見つかりません」と言われ、痛み止めの薬や湿布薬を出されて終わり。あるいは、関節組織や骨の構造的な破綻を指摘され、それを治す治療を提案される――。覚えがある人は、少なくないのではないか?

 一方、奥野院長は「なぜ痛むのか」に着目し、治療を行っている。 

「慢性痛がある部位を造影剤を用いたMRIや超音波で見ると、モヤモヤした細い血管が異常に増えているのがわかります。炎症による痛みの場合、周辺に新生血管(新しい血管)ができ、対になって神経も増える。新生血管は正常な毛細血管と比べて血液の流れが速く、神経を刺激して痛みが生じるのです」

 通常、炎症は数週間で鎮まり、新生血管や神経も消える。ところがまれに新生血管と神経が残ることがあり、痛みが続く。

「新生血管と神経を消失させれば、慢性痛は消える。方法は2通りあります。1つは、手首や太ももの付け根から入れたカテーテル(軟らかい細いチューブ)で、チエナムという抗生物質を新生血管に直接投与する『運動器カテーテル治療』。もう1つは、超音波画像を見ながら、注射器でステロイド剤を新生血管に注入する方法です」

 チエナムは新生血管を一時的に詰まらせ、神経もろとも消失させる。ステロイド剤は、新生血管に伴い増えた神経の癒着を剥がし、痛みを解消させる働きに優れている。 

「どちらの方法も、新生血管と神経の消失を目的としていますが、アプローチが異なりますし、チエナム、ステロイド剤それぞれの薬の働きも異なります。効果を高めるために、2つの方法を組み合わせて行うケースが一般的です」

■痛みが出始めた40~50代で治療を開始する

 運動器カテーテル治療の所要時間は最短20分、平均1時間前後。カテーテルは、市販されているものの中で最も細い0・6ミリで、治療後はばんそうこうを貼ればOK。治療中の痛みもない。

 注射は5~10分ほどで終了。ステロイド剤の副作用を気にする人がいるが、通常量の4~8分の1とごく少量で、局所に使うので問題ない。どちらも日帰りでできる。患者によっては、これらの治療のほか、筋肉や関節をほぐす理学療法や、食事療法などを行う。

 慢性痛であるということのほかに、どういう痛みが適しているのか?

「痛みがある箇所を、押している指の爪がやや白くなる程度の強さで押した時、別の箇所と比べて痛いようなら、検討してみてください」

 関節、筋肉、腱など全身にわたり激しい痛みが慢性的に続く病気「線維筋痛症」には、残念ながらあまり効果が期待できない。また、膝痛、腰痛、股関節痛などは、早い段階でやった方が効果的。

「炎症で増えた新生血管や神経は運動器カテーテル治療で対処できますが、軟骨のすり減りや骨の変形などは改善できません。痛みが出始めた40~50代の時点で治療を受けることをお勧めします」

 健康保険は適用されない。たとえば、膝痛に対する運動器カテーテル治療は24万~29万円。痛む箇所によって治療回数や費用が変わる。

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