漫画家さくらももこさん(享年53)の命を奪った乳がんは昨年、フリーアナの小林麻央さんを死に追い込んでいる。麻央さんの最期はもっと若い34歳。相次ぐ早過ぎる訃報に女性はもちろん男性も気になるのが、早期発見ではないか。治療可能な状況で見つけることはできないのか。東大医学部付属病院放射線科准教授の中川恵一氏に聞いた。
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「乳がん検診を適切に受診すれば、早期発見できます。ただし、一工夫が必要です。それは、厚労省が推奨する2年に1回のマンモグラフィー検査に加えて、同じ間隔での超音波検査、そして毎月の自己触診を組み合わせるのです」
東洋人を含む日本女性は8割が高濃度乳腺とされ、それだとマンモで異常をチェックしにくい。その欠点を補うのが超音波だ。月イチでセルフチェックをするのは、進行が速いタイプを見逃さないため。「生理がある人は、出血が止まって4、5日目に胸の張りや違和感などの違いをチェックする」のが無難だという。
乳がんは40代、子宮頚がんは30代が発症のピーク。がん全体でも54歳までは、男性より女性の患者が多い。2人のケースは、男性にとっても人ごとではない。自治体の乳がん検診の受診率は4割にとどまるだけに、パートナーには受診を勧めることだ。
■便潜血検査は保冷剤と一緒に持ち運ぶ
乳、胃、大腸、肺、子宮頚部のがんを合わせて5大がんと呼ばれる。世界的に検診の有効性が証明されているが、これも受け方にはコツがあるという。
たとえば、大腸がんの早期発見に欠かせない便潜血検査。2日分の便をこすり取るアレだ。2回ずつを3年続ければ、発見率は計算上97%にハネ上がるというが……。
「便に含まれる血液は高温になると、細菌に分解されます。つまり、何らかの異常で出血していても、常温で持ち運ぶと、本来は『陽性』なのに、細菌分解で『陰性』と判定されるリスクがある。採便後は冷蔵庫に保存して、保冷剤と一緒に持ち運ぶことです」
便潜血検査を受けていながら、進行した大腸がんが見つかった。そんな人は、細菌分解の影響を受けた恐れがある。
胃がんは、バリウム検査より胃カメラだ。
「胃がんの原因は、9割以上がピロリ菌感染。そこに塩分過多の食事やストレスが重なって発症します。感染がベースですから、除菌した上で、1年に1回胃カメラ検査を受けるのがベター。それなら、進行の速いスキルス性胃がんも早期発見できます」
肺がんは、喫煙者と非喫煙者で分けて考える。
「肺がん検診はX線検査が基本ですが、ヘビースモーカーは、痰の中のがん細胞の有無を調べる喀痰細胞診と低線量CTを検討するのもいい。非喫煙者は、きちんとX線検査を受けることです」
非喫煙者の肺がんは、腺がんと呼ばれるタイプが多く、X線で見つけやすい。歌舞伎役者の中村獅童(45)は昨年、「奇跡的」と喜ぶほど早期に腺がんが見つかり、手術で復帰している。
厄介ながんの代名詞ともいえるすい臓がんについては、糖尿病の人が要注意だ。
「すい臓がんは糖尿病の人に多く、糖尿病の“第4の合併症”といっても過言ではありません。ですから、糖尿病の人は、毎年1回腹部超音波検査を受けること。糖尿病の人に対するアプローチは尾道方式と呼ばれ、実際、5年生存率が大きく改善するデータが出ているのです」
検診を受ける際は、これらの点が要注意だ。
2018年 がん最前線