いびきに悩むなら…鼻にスルスルな“管”を試すという選択肢

下の部分から鼻に入れる
下の部分から鼻に入れる(セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(株)提供)

 いびきに悩んでいる方は、鼻から管を挿入して空気の通り道を確保する一般医療機器「ナステント」という手もある。開発者の筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構・佐藤誠教授に聞いた。

 いびきは、あおむけになった時、鼻から喉までの気道が狭くなり、空気の通り道が細くなることで起こる。さらに気道が閉塞し、睡眠中に呼吸が止まる「無呼吸」を繰り返すようになると、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断される。

 冒頭の「ナステント」はもともとSAS治療のために考え出された。

「血管や食道など人間の管状の部分を内部から広げる医療機器ステントに着想を得ました。同じ原理で気道を広げ、空気の通り道を確保できるのではないかと考えたのです」(佐藤教授=以下同)

 ナステントは直径4ミリ、長さ120ミリから145ミリまでのシリコーン製の管だ。長さは5ミリごとに6段階になっており、個々の人に合った長さのものを使う。右鼻用と左鼻用があり、空気の通りのいい方に挿入する。軟らかさはソフトとハードがあるが、ハードであっても、記者が触った感じでは、耳たぶくらいの軟らかさだった。

 佐藤教授が実演してくれたが、面白いようにスルスルと鼻に入る。この管が、狭くなった気道に挿入され、空気の通り道となる。違和感を覚える人もいるものの、何度か使えばそれがなくなり、管が入っていることを意識せずに眠れるという。

■マスクがダメな人は4割もいる

 SASの代表的な治療は、CPAP、マウスピース、外科的治療だ。

 CPAPは、鼻に装着したマスクから気道へ空気を送り続けて、気道を開けておくもの。マウスピースは、下あごを上あごより前方に出すように固定させ、上気道を広く保つ。手術は気道を塞ぐ原因になっている扁桃やアデノイドなどを取り除く。

「中でもよく行われるのはCPAPとマウスピースですが、CPAPは『1時間に20回以上の無呼吸』との定義があり、だれでも適用されるわけではありません。また、CPAPが苦しくて使えないといった人が3~4割います」

 CPAPの使用条件を満たさない、あるいはCPAPの使用条件を満たすが使えない人はマウスピースになる。しかしSASや、SASまでいかないいびきが改善されない人も少なくない。

「そういった人が、ナステントで症状改善に至るケースがあるのです。商品化が先になったため、きちんとした論文発表はまだですが、今後はCPAPやマウスピースとの比較試験も行うことを考えています」

 SASの治療の重要性は、近年、一般の人の間でも徐々に浸透してきている。SASを放置すると、昼間の眠気、だるさ、倦怠感が続き、交通事故や労働中の事故につながる可能性が高くなる。無呼吸と低呼吸の繰り返しで心臓に負担をかけ、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などを起こしやすくし、突然死のリスクもある。

「SASではない、しかし、いびきをかくという場合も深刻です。狭い気道で呼吸をするのは、笛を吹き続けるようなもの。一晩中いびきをかけば疲労は大きく、脳も内臓も休まらない」

 一緒に眠る人の睡眠を妨げる問題点もある。いびきがある人は、大音量でなくても、SASのチェックも含めて一度耳鼻咽喉科の受診を。なお、ナステントは保険適用外で、1箱7本入り3478円(税込み)。購入には医療機関の「指示書」が必要だ。かつてのみ込み事故があったが、回避するための改良が加えられている。

■SASは肥満の中高年だけに起こる?

 あごが小さいアジア人は、やせている人や若い人でもSASになる。近年は、子供のSASの問題点も指摘されている。

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