役に立つオモシロ医学論文

夏に生まれた子供は近視になりやすい 1.93倍の解析結果が

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 子供の視力低下には、遺伝などさまざまな要因が考えられますが、生活環境も重要です。近年ではスマートフォンやタブレット端末などが広く普及しており、テレビよりも小さな画面を見つめながら長時間ゲームをすることは子供の視力低下に関係がありそうです。

 そんな中、子供の生活環境と近視(近くのものは見えるが、遠くが見えにくい一般的な視力低下のこと)のリスクを検討した論文が、2018年11月6日付で、英国の眼科専門誌電子版に掲載されました。この研究では、英国で生まれた双子1991例を対象に、平均16歳時点で視力検査を行っています。さらに近視と関連する可能性がある環境要因について調査が行われました。

 解析の結果、子供の近視は、子供が夏生まれだと1・93倍、統計学的にも意味のある水準で高いことが分かりました。9月に新学期が始まる英国では、夏生まれの子供は低年齢で就学することになり、屋外で遊ぶ時間が短くなったり、目を酷使する時間が長くなることが影響しているのかもしれません。

 また、コンピューターゲームなどの電子機器の使用時間が長いことも近視のリスクを高めましたが、そのリスク増加は3%という結果でした。その他、この研究では母親の教育水準や不妊治療の有無などが子供の視力に影響を与える要因であることが示されています。

 近視の発症はさまざまな要因が複合的に作用しており、その原因を明確に特定することは難しいように思います。とはいえ、中国の小学生を対象とした研究でも、「屋外での活動時間が長いと近視の発生率が低い」という結果が報告されており、幼少期は屋外で過ごす時間を増やすことが、近視予防に重要かもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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