白血病と闘う池江璃花子はこれからどんな治療を受けるのか

池江璃花子
池江璃花子(C)日刊ゲンダイ

「白血病」であることを自身のツイッターで報告した競泳女子日本代表の池江璃花子選手(18)。殺到する激励の声に「必ず戻ってきます」と力強く答えた池江は、これからどんな治療を受け、どれくらいの期間がかかるのか。がん専門医として2万人以上の抗がん剤治療に携わってきた佐々木常雄氏(都立駒込病院名誉院長)に詳しく聞いた。

 白血病は骨髄でつくられる血液のうち、成長過程の白血球ががん化して増殖する病気で、主に「急性骨髄性白血病」「急性リンパ性白血病」「慢性骨髄性白血病」「慢性リンパ性白血病」の4種類が挙げられる。現時点で池江がどのタイプかは公表されていないが、慢性リンパ性白血病は日本人ではほとんど見られないことから、除外できる可能性が高い。

「4タイプのうち、慢性骨髄性白血病には劇的な効果が望める薬があります。2001年に登場した『イマチニブ』(商品名グリベック)という分子標的薬で、飲むだけで骨髄移植以上の効果が得られるので、ほとんど入院する必要はありません。8年全生存は85%にのぼります。ただ、ずっと薬を飲み続けなければならないという問題があります」

 急性骨髄性白血病では、抗がん剤を使った化学療法が行われる。

「まずは寛解導入療法を行います。一般的には、複数の抗がん剤を投与して、がん化した白血球=白血病細胞がゼロになるまで徹底的に叩き、骨髄の中まで空っぽにして正常な白血球が新たにつくられるのを待つのです。白血球がゼロになるまでおよそ2週間、新たな白血球がつくられるまで2週間ほどかかります。ですから、4週間が1サイクルとなります。白血病細胞が残った場合は、同じ治療を繰り返すか、抗がん剤の種類を替えて再び治療を行います」

 白血球は、ウイルスや細菌などの異物が体内に入ったときに、攻撃して排除する免疫の役割を担当している。抗がん剤でゼロまで減らしていく過程で、感染症に対し無防備になってしまうため、治療は入院してクリーンルーム(無菌室)で実施されることになる。

■すべてが順調に推移すれば治療期間は4~5カ月

 抗がん剤が効いて正常な白血球が増えてきたら、その後は残っているわずかな白血病細胞を消滅させるために、抗がん剤を投与する寛解後療法(地固め療法)が3~4サイクル行われる。

 急性リンパ性白血病では急性骨髄性白血病とは違う抗がん剤が使われるが、同じく寛解導入、地固め治療が行われ、白血病細胞の根絶を目指す。

 もしも、すべての治療が順調に推移した場合でも、治療期間は4~5カ月かかる。

「とはいえ、治療終了後すぐ競技に復帰というわけにはいかないのではないでしょうか。治療中のトレーニングは難しいですし、特に急性リンパ性白血病の化学療法では、筋肉に影響するステロイドホルモンも使われると思います。筋力と体力を競技ができるレベルまで戻すには少し時間がかかります」

 仮に再発リスクが高い急性白血病と診断された場合は、寛解後療法として同種造血幹細胞移植(骨髄移植)が行われる。

「患者さんの白血球の型にマッチした兄弟姉妹、あるいは『骨髄バンク』に登録されているデータからドナーが選択されます。骨髄移植は超大量の抗がん剤と全身の放射線治療を行って白血球を消滅させた上で、提供者の骨髄が定着するまで約1カ月間かかります。投与される提供者の骨髄(移植片)にとっては、移植先である体は異物です。そのため、攻撃してしまう移植片対宿主病の合併症が起こることもあります」

 池江選手は高熱が続いたり、血が止まりにくいといった重い症状は現段階では出ていないという。仮に上記のような治療が行われるとすると、まだ体力がある段階で治療開始となるので、完治を期待したい。

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