かつて、「九州の沿岸地方の風土病」といわれた白血病があります。
四十数年前、私が国立がんセンター(当時)で研修をしていた頃、鹿児島から勉強に来た若い医師に「私たちの病院では病名がはっきり分からない患者がいて、治療しても良くならずに亡くなる。教科書にも載っていないし、やはり白血病なのでしょうか?」と問われました。
彼が持参した末梢血液の標本には、核がクローバー状にくびれた見たこともない異常な細胞がたくさんありました。白血病専門のベテラン医師たちも代わる代わる顕微鏡をのぞきこみ、首をかしげるばかりでした。
その後、この病気の病態解明の研究が進み、HTLV―1(ヒトT細胞白血病ウイルス―1型)というウイルスが原因の「成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)」だと分かってきました。このウイルスに感染している方(キャリアー)は、九州や西南地方に多かったのです。
がんと向き合い生きていく