思わぬアクシデントにより若い人でも発症する場合がありますが、多くは50代から増えてくるのが網膜剥離です。目の中の網膜といわれる膜が剥がれる病気です。網膜は目の中に入ってくる光を刺激として受け取り視神経を通じて脳に伝える組織です。カメラでいうとフィルムのような働きをします。
網膜が剥がれても痛みはありません。そのため進行しても気づきにくく、前兆として蚊が飛んでいるような飛蚊症や目を閉じているのに稲妻のような光が見える光視症が表れます。
網膜の中心部である黄斑部の網膜が剥がれると急激に視力が低下して失明することがあります。
網膜剥離を起こす原因は加齢と近視、糖尿病網膜症といった一部の病気、それに事故などによる目の打撲や衝撃です。
とくに強度近視の人は注意が必要です。通常、成人の眼球は直径が約24ミリですが、強度近視の人は眼球が伸びて直径が27ミリ以上になります。一般的に目の前12センチに近づかないと物が分からない状態が強度近視です。
強度近視になると網膜が眼球の中のゼリー状の硝子体に引っ張られて穴が開き(網膜裂孔)、そこから眼内の水分が網膜の下に侵入して、徐々に網膜が剥がれます。
一方、糖尿病で血糖が高い状態が続くと網膜の細い血管がダメージを受けて詰まり、網膜全体に酸素や栄養素が行き渡らなくなります。それを補うために新生血管が伸びてきますが、新生血管はもろいために出血します。その部分にかさぶたのような膜(増殖組織)ができ、それが原因で網膜全体が剥がされて剥離が起こるのが増殖性糖尿病網膜症といわれています。
また、アトピー性皮膚炎などのアレルギーで目を何度もこすることで網膜剥離を発症することがあります。
網膜裂孔だけの場合は、瞳孔から網膜裂孔に向けてレーザーを照射して網膜とその下の組織とを焼き付ける光凝固療法を行います。眼球内の水分が網膜の下に侵入するのを防ぎ、網膜を剥がれにくくします。
網膜剥離が始まっている場合は手術になります。やり方は2つあります。
ひとつは裂孔ができた場所の眼球の外側の強膜にシリコーンでできたバンドのようなものを縫い付けて眼球を内側にへこませて網膜と眼球壁を癒着させるバックリング手術です。もうひとつは器具を眼内に入れて網膜に対する硝子体牽引を解除する硝子体手術を行う方法です。
バックリング手術は結膜を切るため、その後緑内障ろ過手術ができなくなるという問題があり、敬遠する眼科医もいます。
(つづく)
失明リスクの高い目の病気