100年老けない脳の作り方

ボケない暮らしに数学を 大学生の5割以上が間違う問題も

「相対性理論」めで理解しなくていいが…
「相対性理論」めで理解しなくていいが…(C)日刊ゲンダイ

 今年10月に予定される消費税の増税。8%から10%に引き上げられると、税率としては確かに2%のアップだが、支払額の増加分として考えれば1.851…%だ。身の回りのホントの数字を理解しなければ、どんどん頭が老けていく。

 まずは簡単な問題だ。《2億円は50億円の何%か?》

 正解は、2を50で割って、商(割り算の結果)の0.04を導き出す。つまり、4%だ。

 ところが、大学生の2割前後は間違うという。「最も多い誤答は、50を2で割って25%とする解答です」

 こう語るのは、「『%』が分からない大学生」の著者で桜美林大学の芳沢光雄教授だ。

「なぜ%を間違える人が増えてしまったのか。そこには国語力の問題もあるでしょう。『~の…に対する割合は〇%』『…に対する~の割合は△%』といった理解力が落ちているのです」

 突き詰めれば、牛丼を30円値上げすると怒る人は多いが、消費税が上がっても反応は鈍い。その理由が%への理解不足かもしれない。

 では、この問題はどうか? なんと、大学生の5割以上が間違う。

《2000年に対して売上高が2001年は10%成長し、2001年に対して2002年は20%成長した。このとき、2000年に対して2002年は何%成長したか?》

 もう予想がついた人もいるだろうが、半数以上の大学生は10%と20%を足して30%と誤答してしまう。正解は1.1×1.2と計算して1.32から算出する32%だ。

 ここまで読んで頭が痛くなった人は、逆に言うと、典型的な日本人だ。フリーアナウンサーの久米宏氏も先日、自身のラジオ番組で小学校の割り算でつまずいたことを嘆いていた。

■「数学が苦手」な日本人を利用するマーケティング戦略も

 さて、今となっては夢の政策である池田内閣の「所得倍増計画」。1961年から10年間で給与を2倍にするというものだった。先ほど間違った学生は「10年間で2倍だから年10%ずつ10年間給与が増えていけばいい」と考えてしまうだろう。しかし、1.1×1.1×1.1×…と続けていけば、1.1を8回掛けて、8年目には約2.14倍となる。実際、所得倍増計画は経済成長率が想定より高かったこともあって7年で達成している。こうした「数学が苦手」な日本人をうまく利用するマーケティング戦略も、いたるところでよく見かける。

 例えば、あるカード会社は「8秒に1枚の申し込み」と、いかにも人気があるかのような宣伝を展開していた。しかし、1日は8万6400秒だから、1日に約1万枚、年間で365万枚前後の新規加入数になる。そのカード会社の会員数は現在、約1500万。国内最大手のJCBカードが約8400万会員だから足元にも及ばない。

 同じように「98%の顧客が満足」と宣伝している保険会社もあるが、分母は400人。仮に「400万人が満足」と「400人のうちの98%が満足」ではどちらを選ぶだろうか。

 では、家電量販店の「1割引き」と「ポイント10%還元」はどちらがお得なのか? 1割引きは文字通り1万円の商品を購入すると9000円になることだが、ポイント10%は次回の買い物の際に「1000円分の買い物ができる」権利のこと。

 すなわち、次回は1万1000円の買い物を1万円でできることになる。この場合、割引率は1000円を1万1000円で割って、約9.1%になる。しかも、店側としては次も足を運んでもらえるというメリットがある。

日本は国際平均より21%以上も「好きではない」
日本は国際平均より21%以上も「好きではない」/(C)日刊ゲンダイ
野村監督「結果の裏側にあるプロセスが重要」

「プロ野球の野村克也さんは著書の中で『絶対に結果論で叱らない』『結果の裏側にあるプロセスこそ重視すべき』と語られています。数学とはまさしくそうで、大学入試のマークシートのように答えの“当てっこ”ではありません。この部分が今の日本人には弱い気がします。20世紀はグロスの時代であり、大きな数字が評価されました。しかし、21世紀は国民1人当たり、時間当たり、金額当たり……といったコスパの計算になってくるでしょう。つまり、『%』の概念そのものであり、GDP600兆円目標といった数字はあまり大きな意味を持ちません」(芳沢教授)

 日本は、GDPは米国、中国に次いで第3位、しかし国民1人当たりのGDPはなんと世界26位。また、日本は輸出総額では世界4位だが、国民1人当たりでは世界44位。むしろ、輸出小国といっていい。

 夫婦関係も一緒。結論だけ言い争ってもダメ。数学的思考法のプロセスを大切にして、問題点を議論することで夫婦仲はよくなる。

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