性感染症最前線

エイズ<3>郵送検査では「偽陽性」が出る可能性もある

国連合同エイズ計画事務局長のミシェル・シディベ氏
国連合同エイズ計画事務局長のミシェル・シディベ氏(C)共同通信社

 国連合同エイズ計画はエイズ流行を制圧する戦略として2014年に「90―90―90目標」を掲げている。これは、世界を8つの地域に分けて、地域ごとに20年までに「3つの90%」の達成を目指そうというものだ。

 3つとは、①感染者の90%以上が診断を受け感染を知ること(診断率)②診断を受けた感染者の90%以上が治療を受けること(治療率)③治療中の感染者の90%以上で血中ウイルス量を抑制すること(ウイルス抑制率)である。

 達成すれば、全感染者の治療の成功率を格段に引き上げることができるとされる。

■郵送検査も選択肢の一つ

 では、日本ではどの程度まで達成されているのか。国内の研究では15年の時点で「86―83―99」とされ、感染者のうち約14%が自分の感染を知らないと推定されている。国内のエイズ発生動向によると、17年のHIV感染者とエイズ患者を合わせた新規報告数は1389件。年間どれくらいの人が検査を受けているのか。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が言う。

「保健所などのHIV抗体検査件数は17年が約12万件です。国内のHIV陽性の報告は約45%が保健所などの検査施設で、約55%が医療機関からあがってきます。ですから、医療機関の年間検査数も保健所と同等かそれ以上と思われます。しかし、近年は民間の郵送検査を受ける人が急増していて、その人たちのフォローがどうなっているのかよく分かっていません」

 民間の郵送検査とは、主にネットから検査キットを購入し、自分で血液を採取し、検査会社に送付する検査のこと。厚労省研究班の調査では、16年の利用件数は11社で9万件以上にのぼっている。人と対面することなく、手軽に検査できることが人気の理由だ。

 しかし、検査精度や個人情報管理などの基準がなく、国の承認制度もない。やり方が悪いと正しい結果が出ない可能性もあり、結果が陽性だった場合に、その後きちんと医療機関を受診したか不明という問題点が指摘されている。

「郵送検査も選択肢の一つではあります。ただし、あくまでもスクリーニング検査なので、偽陽性が出る可能性があります。結果が陽性なら検査機関や医療機関で、必ず『確認検査』を受ける必要があります。感染の不安を取り除きたいなら、やはり保健所や医療機関で検査を受けた方が確実です」

 また、採血から結果判定まで自分で行う「HIV自己検査キット」は、国内で認可されたものはない。個人輸入代行会社から海外製品を購入するのはやめた方がいい。

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