性感染症最前線

C型肝炎<1>複数の性交パートナーがいるとリスクが高まる

今は入れ墨で感染することはない
今は入れ墨で感染することはない

 A型肝炎、B型肝炎と並んで「C型肝炎」も性感染症のひとつに含まれる。C型肝炎ウイルス(HCV)は血液を介して感染するので、国内では1992年以前の輸血、HCVの混入した血液製剤、注射器の共有、入れ墨などが主な感染経路だった。しかし、いまは検査体制が十分整っているので、医療行為による感染は、ほとんどなくなった。

 では、どうしてセックスで感染する可能性があるのか。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が言う。

「C型肝炎は、HCVの持続感染者(キャリアー)の血液が他人の体内に直接入ることで感染します。ですから、一般的な男女間のノーマルなセックスで感染することはまれです。感染のリスクが高いのは、特にアナルセックス(肛門性交)など、粘膜が傷ついた状態でセックスすることです。いまはMSM(男性同性愛者)を中心とした性感染が増えているのです」

 しかし、性風俗従事者を対象とした国内の調査では、HCV抗体陽性の頻度は、同年代の一般女性と比べて8~10倍高いと報告されている。複数のセックスパートナーを持つ人は、それだけリスクが高くなるといえる。

 HCVに感染すると、2~3カ月で急性肝炎を起こす。しかし、自覚症状が乏しく、体が少しだるい、食欲がない程度で気がつかない人が多い。そして、最大の問題とされるのが、高率で慢性化すること。感染者の約70%が慢性肝炎に移行する。

 国内のキャリアーは150万~200万人いると推計され、うち約30万人が自分の感染を知らないとされる。そのまま放置しているとB型肝炎と同じで、慢性肝炎から肝硬変、肝がんと進展する恐れがある。

 意識障害を起こす肝性脳症、腹水、黄疸などの症状が出るのは肝硬変の中期以降になってから。こうなると、治療でウイルスが退治できなくなる。慢性肝炎のうちに早期発見、早期治療することが重要になる。

「C型肝炎は予防するワクチンがなく、慢性肝炎の状態で見つけるには、『肝炎ウイルス検査(採血)』を受けないとなかなか難しい。B型肝炎も一緒に調べられるので、MSMの人、アブノーマルなセックスをする人、複数のセックスパートナーを持つ人などは、定期的に検査をした方がいいでしょう」

 C型肝炎は新薬の登場で、いまは抗ウイルス薬だけで高い治癒率が期待できる。HCVは2つのタイプがあるが、1型でほぼ100%、2型で96%の確率でウイルスを駆除できるとされる。

 肝炎は性感染症であることを認識しておこう。

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