アジア、アフリカ、中南米などの発展途上国へ旅行する時に、注意したい感染症のひとつに「A型肝炎」がある。その感染経路は、感染者の大便に含まれるA型肝炎ウイルス(HAV)に汚染された水や野菜、魚介類などの生食による経口がよく知られている。日本でも昔は、くみ取り式便所から地面に吸収されたウイルスが井戸水に入り感染源になったり、その後は二枚貝などの生食が主な感染源になったが、今は衛生管理が進み、汚染された飲食物を介した感染は減りつつある。
一方で近年、欧米や日本などの先進国で急増しているのが、性感染症としてのA型肝炎だ。どういうことなのか。
性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が説明する。
「HAVは大便中に排泄されるので、糞を介して感染します。ですからアナルセックスや肛門をなめる行為(リミング)、肛門を触れたペニスや指をなめるなどすることで感染します。どの国でも最もリスクが高く、流行の主体となっているのは男性同性愛者(MSM)間での性的接触です」
性感染症最前線