医師の常套句「様子を見ましょう」の真意

高血圧編<2>降圧剤の変更直後や高齢者は副作用に注意を

生活習慣を見直すことが大事
生活習慣を見直すことが大事

 収縮期血圧140㎜Hg以上または拡張期血圧90以上は、高血圧の薬物治療をスタートする目安になります。日本高血圧学会によると、その基準を満たす推定患者数は4300万人。3人に1人が高血圧です。かかりつけ医で降圧薬を処方されている方は、少なくないでしょう。

 診察室を訪れた患者さんは血圧を測定され、順調なら、「このまま様子を見ましょう」と言われます。そう言われた方の中には、「悪くもならないけど、よくもならない治療を続ける意味があるのだろうか」と思われることがあるかもしれません。

 降圧薬は、高血圧を根本的に治療する薬ではなく、血圧をバランスよく下げて動脈硬化、脳卒中、心臓病などを予防するための薬です。その目的は患者さんも理解していることがほとんどなのですが、薬物治療の基準値を少し上回る程度では、頭痛や動悸(どうき)といった症状はありません。患者さんの危機感が乏しく、ほとんど変化のない治療をじれったく思われるのでしょう。

 降圧薬でよく使われるのは、①カルシウム拮抗(きっこう)薬②アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤③サイアザイド利尿薬の3つで、最初はいずれか1種類の低用量でスタート。それでも血圧が思うように下がらなければ、用量を増やしたり、別のタイプの薬を加えたりするのがセオリーです。

 血圧が140~159/90~99(Ⅰ度高血圧)で、処方は1剤の低用量なら、生活習慣を見直すことで、2~3割は薬をやめることができます。2剤併用でも、薬を減らすことが可能です。

 それくらいの血圧の方が薬の変更なく、「様子を見ましょう」と言われるのは、「生活習慣の改善が不十分」ということの裏返しで、「もう少し生活習慣の改善を頑張ってください」という意味になります。

 ただし、高齢者はすでに動脈硬化が進んでいることが多く、急に血圧を下げ過ぎると、めまい、頭重、全身の倦怠(けんたい)感、食欲不振などが表れやすいので、慎重な投与が大切です。そういう場合の「様子を見ましょう」は、副作用に注意しながら無理のない範囲で血圧を下げましょうということになります。

 どの薬にも副作用があり、降圧剤の中には要注意な副作用もあるため、薬物治療のスタート直後や薬を変更した後は、しばらく副作用のチェックが欠かせません。治療状況が変わったときは、高齢者のケースと同じで文字通りの意味です。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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