性感染症最前線

ペニスの裏から黄白色のグミ状物質が…「タイソン腺」の謎

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 性感染症専門クリニックでは「もしかして性病ではないか」と、さまざまな相談が持ち込まれる。「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)を受診した20代男性の症例はこうだ。

「先生、ペニスの亀頭と裏筋の間にくぼみのような場所があるのですが、そこから直径5ミリほどの黄白色で硬めのグミのようなものが出てきました。心当たりがないのですが、何か病気をもらったのでしょうか」

 マジマジ観察しないと気付きにくいペニスの裏側の異変だが、珍しいことではない。尾上泰彦院長が言う。

「ペニスの裏筋は『包皮小帯』といいます。その左右に『タイソン腺』という分泌腺が開口していて、日本人男性の約50%に認められます。そこから黄白色チーズ様の脂肪性物質が分泌されています。その包皮小帯の真下にくぼみがあり、たまたまそこにタイソン腺が存在する人は、何年もかけてそのくぼみに分泌物がたまって塊になってしまうことがあります。それを尖圭(せんけい)コンジローマと間違って受診する人が時々います」

 尖圭コンジローマとは、性器や肛門に先のとがった小さなイボがたくさんできる性感染症。皮膚や粘膜の微小な傷からウイルスが侵入して感染する。一方、タイソン腺にできたグミのような物体は、生理的に分泌されている脂肪性物質の塊なので病気ではない。医療機関を受診すればきれいに取り除いてくれるという。

 タイソン腺は皮脂腺の一種で「包皮腺」とも呼ばれる。皮脂腺は通常、体毛1本に対してそれぞれ存在し皮脂を分泌して皮膚や毛を保護している。毛のないペニスの亀頭冠や包皮には、特有な皮脂腺が発達した包皮腺として存在している。包皮腺は女性にも大陰唇、小陰唇、陰核や陰核包皮の周囲にある。分泌される脂肪性物質は、無色無臭の皮脂と違って黄白色チーズ様で臭みがある。なぜなのか。

「タイソン腺に代表される包皮腺の分泌液の臭いが強いのは、ワキガの原因となるアポクリン腺の分泌物と同じように、動物である人間が、かつて異性を引きつけるためのフェロモンの役割を果たしていた名残という説があります。ハッキリしたことは分かっていません。その包皮腺の分泌物が脱落した包皮の上皮細胞と混ざって恥垢(ちこう)となるのです」

 恥垢とは俗に言う「ちんカス」や「まんカス」のこと。特に男性の包茎は、ちんカスがたまりやすく、細菌による感染症の温床になる。入浴時には、亀頭のカリの部分や裏筋付近はやさしく入念に洗うようにしよう。

関連記事