90歳現役医師 最強の体調管理

補充療法だけではない テストステロンを増やす5つの習慣

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写真はイメージ(C)sakai000/iStock

 注射などによるテストステロン補充以外にも、テストステロンを日常生活を送る中で高める方法がある。

 1つ目はお風呂だ。

「筋肉や皮膚、内臓などを構成するタンパク質の立体構造の修正や再生を果たす、HSP(ヒートショック・プロテイン=熱ショックタンパク質)という物質はストレスから細胞を守る機能を持っています。これがテストステロンの働きを助けるのです」

 このHSPを手っ取り早く増やすには体温を高めること。

「実際にトップアスリートのサポートやがん患者治療のために、専門家が行っているHSP入浴法を紹介しましょう。42度のお湯なら10分、41度なら15分、40度なら20分ほど入って体が熱を得るようにします。お風呂から出た後は、10~15分、ガウンを羽織るなどして体温を37度に維持します。汗がしっかり出るので水分補充を忘れないように。これを週2日やります。HSP入浴をすると、HSPは1日目から増えて、2日後がピークになります。大事な仕事や行事などストレスがかかりそうな“勝負日”は、2日前にHSP入浴をするといいでしょう」

 HSP入浴法の肝心なところは、最後の体温を37度に保つこと。風呂上がりでも我慢して暖房の効いた部屋にいる。ストレッチやスクワットをしてもいいだろう。

 2つ目は筋トレ。

「私が注目しているのは加圧トレーニングです。このトレーニングのすごいところは、腕なら5分、足なら15分ほどで、十分であること。脂肪燃焼、筋力アップ、動脈硬化の予防、美肌効果など、さまざまな効能が科学的に実証されている加圧トレーニングですが、一番注目すべきはIGF―1(インスリン様成長因子)というホルモンの分泌が活性化すること。体の成長と、新陳代謝を促進する成長ホルモンです」

 3つ目はウオーキングなど1日30分の運動だ。

「1日30分程度の少し汗ばむくらいの運動は脳内のテストステロンが構成され、新しい脳細胞を増やすことが分かっています。ウオーキングをすると男性ホルモンが脳に出てくることも。また、腰から上の、上半身の筋肉をほぐすストレッチも忘れてはいけません。ストレッチ、ウオーキングはもちろん、もっと若い方は有酸素運動になるジョギングなどもいいでしょう」

 4つ目は肉、ニンニク、タマネギを意識して食べること。

「テストステロンの原料はコレステロール、つまり脂。最低でも肉を1日100グラムは食べるようにしてください。ただし、霜降り肉だと脂が多すぎるので赤身を選ぶのがベター。野菜ではニンニクとタマネギ。特にニンニクは食べた後、血中テストステロン値が5pg/ミリリットル程度、一時的に上昇したという報告もあります(40~50歳の中央値は11~14pg/ミリリットル)。切ったりすりおろしたりすると効果が弱くなるので、できれば丸ごと調理してください」

 5つ目は睡眠。

「テストステロンの分泌がもっとも活発なのは深夜から明け方にかけて。男性ホルモンにとってのゴールデンタイムに起きていると、活性化しません。遅くとも12時には寝て、7時間睡眠を目指してください」

(構成=中森勇人)

熊本悦明

熊本悦明

1929年、東京都生まれ。東京大学医学部卒。日本メンズヘルス医学会名誉理事長、札幌医科大学名誉教授。現在は「オルソクリニック銀座」(東京・中央区)で、名誉院長として診療中。近著「『男性医学の父』が教える 最強の体調管理 テストステロンがすべてを解決する!」(ダイヤモンド社)がある。

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