健康のため日々テレビ、雑誌などの健康情報をチェックしている人は少なくありません。
しかし、著名な専門家がいくら「〇〇は健康にいい」「△△が効く」と語ったとしてもその情報が正しいか否かを見抜く力がなければ健康にはなれません。専門家が言うことが正しいとは限らないからです。
よく健康情報の番組や記事には「××学会の機関誌によれば」というフレーズが出てきます。一般の人から見れば、いかにも権威のありそうな医学会が作成するその雑誌に記載されている論文は事実に思えるでしょうが、本当でしょうか?
それを知るには、その雑誌が世界からどう見られているか、を学ぶ必要があります。
実は医学誌などの学術誌には超一流から三流以下まで実にさまざまな雑誌があります。三流の医学雑誌には研究の手法がでたらめだったりして、とうてい本当とは思えないことが書いてある雑誌もあるのです。
その学術雑誌が一流かそうでないかを知るには、そこに掲載された論文が世界中の学者たちにどれだけ引用されたかでわかります。それを「インパクトファクター」と言って、特殊な計算方法でランキングしたものが公表されています。
例えば2018年の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」という医学雑誌で点数は70・67点、「ネイチャー」43・07点、「サイエンス」41・03点でした。一方、2015年の日本糖尿病学会の英文学術誌は2点以下でした。仮に、糖質制限は是か非か、について欧米の一流の学術誌と日本糖尿病学会の主張が対立したとすれば、どちらを信頼すべきかは一目瞭然でしょう。
食品会社の本音と建前を意識しておくことも健康には大切です。命につながる食品を扱う会社とはいえ、その目的はたくさん売って儲けることです。もちろん、根底に食を通じて消費者に貢献するという意識はあると思います。しかし、企業である以上、利潤を追求することは当然ですし、それは悪いことではありません。ただ、消費者は食品会社の主張の中身を見分ける力が必要です。
例えば保存料の使用について、食品会社は「消費者が腐ったものを口にして健康を害さないように使っている」というでしょう。しかし、それは単に「一度つくったものを長く売りたいから、保存料を入れて在庫管理している」とも考えられます。保存料が健康に良いのか、悪いのかは、消費者がその両面を考えたうえで判断しなくてはなりません。
また、食品会社は「消費者がもっと食べたくなる食品」を開発するため、「おいしさの研究」を行っています。その結果、糖質を使った商品にはその効果があることがわかっています。糖質を取るとヒトの脳は幸福感を得て、その効果が消えるとまた食べたくなる。糖質を使った食品は人間の本能に訴えるからです。それが甘い食べ物や飲み物が世の中にあふれている理由です。
ですから、生まれつきの体質、病気、薬の副作用といった何らかの事情で太った人を除いた、肥満の多くは、そのことを知らずに過ごした結果ともいえます。いまは医療情報をたくさん得ればいいのではなく、その情報を見極め、正しく判断する力がなければ健康になれない時代なのです。
ドクター牧田 最強の食事術