世界には「割礼」と呼ばれる風習、儀式があると聞いたことがある人は多いと思います。
普通は男子の陰茎包皮の一部を切除して亀頭を露出させる手術のことを指し、いわゆる「包茎手術」と同じようなものです。
イスラム教やユダヤ教は、宗教上の信条から新生児期に割礼を行う伝統があります。キリスト教が約8割を占める米国では、宗教的理由とは関係なく、衛生上の理由などから1990年代までは新生児期に包皮切除手術を行う風習がありました。
しかし、衛生上の必要性が薄いこともあり、98年に小児科学会から包皮切除を推奨しないガイドラインが提出され、手術を受ける男子は減りました。それでも6割程度は包皮切除手術を受けているとされています。
一方、女子はどうか。実は、世界ではアフリカを中心に女性器を切除する儀礼を持つ地域があるのです。かつては「女子割礼」と呼ばれましたが、比較的無害な男子の割礼と違って、健康を損なう慣習で、女性の人権を侵害する行為であることから「女性器切除(FGM)」と呼ばれるようになり、世界から批判が集まっています。2012年には国連総会でFGMを禁止する決議が採択されています。
FGMの内容は、クリトリスを切除したり、同時に大陰唇と小陰唇を切除したり、さらに腟口を縫合して狭めたり、性器を突き刺す、切り込む、焼く、削るなど。考えただけでもゾッとします。
対象になるのは、主に乳児から初潮前の少女ですが、結婚直前や出産直後の女性に行われる場合もあります。
FGMは伝統的に助産師や「割礼師」と呼ばれる人たちによって、カミソリや鋭利な石、ガラスの破片などを使って、麻酔も薬もなしで行われます。そのため激しい痛みや出血によるショック、感染症などで死亡するリスクがあります。
尿道損傷、失禁、激しい性交時痛、うつ症状などの後遺症も深刻で、心身に多大な影響を与えます。
国連機関の発表では、このような悲惨な目に遭った女子が19年時点で全世界に2億人以上いるとしています。主な国は、アフリカは少なくても29カ国、中東、アジア、南米の数カ国、欧州のアフリカ系移民社会の一部などです。
イスラム圏が多いですが、決して宗教的な儀式ではありません。それは民族の伝統的な女子の通過儀礼として、宗教が生まれる前から2000年以上も続いている風習とされているからです。いくら伝統や文化でも、古き悪習は早く廃絶してもらいたいものです。
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