半日断食ダイエットで生活リズムを回復「年明けうつ」撃退

新年仕事始めの朝、神田明神で参拝をするサラリーマンたち
新年仕事始めの朝、神田明神で参拝をするサラリーマンたち(C)ロイター

 新年が始まったというのに「体がだるい」「やる気が起きない」という人も多いのではないか。その原因はハッキリしている。年末年始の夜更かし&食っちゃ寝の生活で体重が増え、生活リズムが狂ったからだ。これをリセットするにはどうすればいいのか? 時間栄養学の専門家で「食べる時間を変えれば健康になる」(ディスカヴァー携書)の著者でもある愛国学園短期大学の古谷彰子非常勤講師に聞いた。

「年末年始は一年間で最も太りやすい時期です。だるい、やる気が出ない、というのはそのせいです。とはいえ、その程度の減量のためにスポーツジムに行ったり、食事の量を減らしたりする気にはなれないのではないでしょうか。そこでお勧めしたいのが『半日断食ダイエット』です。朝食を始めて夕食を終えるまでを12時間に制限するだけで、水分はいつ飲んでもいいし、12時間以内なら何をいくら食べても構いません」

 この半日断食ダイエットには“科学的根拠”がある。つい最近も「Nature」「Science」と共にライフサイエンス部門で世界最高峰の学術雑誌とされる「Cell」の代謝部門の姉妹誌「Cell Metabolism」のオンライン版(2019年12月2日付)に掲載され、その効果が注目された。

 発表したのは米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究グループで、メタボ患者にこの方法を試したところ、体重が減り、血圧が下がり、インスリン濃度が安定したという。

「研究対象となったのは、朝食開始から夕食を終えるまでの摂取食事時間が14時間以上のメタボ患者19人です。研究ではこの時間を10時間以内に制限し、実験開始前2週間と実験開始後12週間の食事時間と内容を記録・解析しています。ちなみに10時間以内に食事を終える以外の条件はありませんでした」

 記録を解析した結果、19人は平均して体重は3%、腹部内臓脂肪は4%、それぞれ減少した。しかも、多くの参加者で総コレステロールが7%、悪玉コレステロール(LDL―C)が11%低下し、血圧降下も認められ、空腹時血糖値が5%、空腹時インスリン濃度が21%改善したという。

 参加者の70%で睡眠の質もしくは睡眠量が改善し、参加者は全体的に活力が増したとも報告された。常用していた脂質異常症の薬や降圧剤の量が減ったり、やめることができた参加者もいたといい、多くの参加者が研究後もこの食生活を継続しているというから驚きだ。

 研究では夜間14時間断食だったが、これを真似るには朝7時に食事をした人は夕方5時までに夕食を終える必要があり、難しい。ならば夜間12時間断食の半日断食ダイエットの方がより現実的だ。

 それにしてもなぜ、食べる時間を集中させるだけで、やせられるのか?

「ヒトを含めた地球上の多くの生物は約24時間周期からなる体内時計『サーカディアンリズム』を持っています。ところが、胃や腸、心臓、皮膚といった末梢組織はそれぞれ別の時間周期で動いています。このリズムを毎日一斉にリセットしているのが太陽光とその日初めて取る食事による刺激です。しかも末梢組織へのリセット力は食事の刺激がより強いことがわかっています。長い絶食時間を設けることは、最初の食事の刺激をより強めることになり、リセット力がより強調されることにつながるのです」

 実際、古谷氏は食事の内容や量を変えずに絶食時間を長くすることだけで20キロ近く減量した経験があり、病院の依頼で行った栄養指導でこの方法を使って多くの患者をやせさせることに成功したという。時差ボケ解消にも効果があり、始めて2~3日で効果が実感できる人も多いという。

「もちろん、食事の内容や量を変えなくても半日断食ダイエットは効果がありますが、より大きな成果を得るには、その日最初の食事で体内時計が大きく動くような食べ物の組み合わせを知る必要があります。マウスの実験でそれはご飯やパンなどのGI値の高い食材(食後に血糖値が上がる=インスリン分泌が多い)とタンパク質でした。脂質は魚油が良いことがわかっています。その意味では焼き魚にごはんの組み合わせが良いということでしょう。また、夜に塩分の多い食事を取ると、肝臓の体内時計が夜型に進んでしまいます。控えめにした方がいいでしょう」

 一方、夕飯は睡眠時間を確保するためにも時計遺伝子が動きにくい食材の摂取を心掛ける。

「それには同じ炭水化物でもサツマイモやジャガイモなどのイモ類を中心にするといいでしょう。翌日の最初の食事のインパクトを強めるために朝食と夕食の食事量を3対1にしたいものです。こうして体内時計を正常に保つようにすれば体を元の生活に戻すことができるはずです」

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