遺伝子治療薬はここまで来ている

難治性の白血病の遺伝子治療薬は「患者自身の血液」が薬に

 実際に医療現場で使われている遺伝子治療薬の中から、今回は難治性の白血病の治療に対する遺伝子治療薬である「キムリア」(一般名:チサゲンレクルユーセル)について解説します。キムリアは「CAR―T(カーティー)療法」の先駆けとなった薬で、2019年3月に日本でも認可が下りている画期的な新薬です。

 まずキムリアが注目された理由のひとつに価格があげられます。1回の治療にかかる金額は約3400万円。保険診療も可能なので、患者さんが満額を支払うわけではないとはいえ、超高額です。

 もちろん、注目されたのは価格だけではありません。キムリアは他の薬とまったく違う、まったく新しい薬です。従来、「薬」といえば、合成した化学物質、天然物から抽出した化学物質、最近では生物学的製剤と呼ばれる細胞由来の製剤や血液製剤などでした。しかし、キムリアは「自分自身の血液(細胞)」が薬になるのです。

 キムリアの製造方法を大まかに解説すると、自分の血液を採血などで取り出し、そこからT細胞と呼ばれる血液成分を分離し、そのT細胞に遺伝子改変(導入)をします。つまり、自分自身の細胞をいったん取り出し、がん細胞を攻撃できるように攻撃力を高めた上で、自分の体に戻すのです。

 遺伝子治療というだけでも画期的ですが、自分自身の細胞が遺伝子改変によってパワーアップして薬となり、自分自身を助けるというのですからすごい時代になったものです。

 次回は、キムリアの対象となる病気や画期的な遺伝子治療法「CAR―T療法」について、詳しくお話しします。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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