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巻き爪の悩み…ハイヒールをよく履くことに関係があるの?

巻き爪の主な原因は歩き方
巻き爪の主な原因は歩き方(C)日刊ゲンダイ

 巻き爪で悩んでいます。都心の会社近くにマンションを購入しました。通勤電車から解放され、仕事もデスクワークなので、ハイヒールなど、おしゃれを楽しんでいます。何か関係がありますか? (30代女性)

 関係がないとは言えません。足の主に親指の爪が内側に曲がる巻き爪は、爪の切り過ぎが原因と言う人がいますが、必ずしも正しくありません。爪は指の皮膚を保護するために生えています。白い部分を少し残して真横に切り、爪の両端の角は丸くなるように切り落とすのが正しい切り方です。白い部分を残さず、両端を切り落とす「深爪」はその原因のひとつですが、巻き爪の主な原因は歩き方です。

 もともと爪は巻くようにできています。健康な人の足の親指の爪がそうならないのは、歩くときに親指が地面をしっかりとらえて根元にしっかり体重がかかるからです。その結果、足にアーチができて足の指に沿うように緩やかな曲線を描くのです。ですから、足の指が浮いて、しっかりと地面を踏みしめられないような先の細いヒールなどの靴を履いていたり、ほとんど歩かない人などは、足のアーチがつくれないために、巻き爪になるのです。

 実際、寝たきりの高齢者の爪は、ほとんどが巻き爪です。痛がらないのは、歩かないからです。体重が足にかからないため、爪が足の指に食い込むことがないのです。

 予防法は正しく歩くことにつきます。足の指全体でしっかり地面を踏みしめられる靴を履き、体重のバランスが崩れた、クセのある歩き方を改めることです。

 とはいえ、すでに巻き爪になった人は、「痛くて歩くことなんてできない」とおっしゃるでしょう。巻き爪を根本的に治療しようと思えば、手術が一番です。

 巻き爪の手術は「フェノール法」が主流です。フェノールとは薬品の名前です。指の付け根に麻酔の注射をして、巻いている爪の端を根元まで切除し、その部分から新たに爪が生えてこないように、爪になる前の爪母細胞をフェノールで焼いてしまいます。

 手術は10分程度で終わります。当日から入浴もできます。もちろん、普通に歩くことができます。麻酔が切れた後も痛みのために眠れないようなことはありません。

 手術で長年の悩みが解決し、「もっと早く手術すればよかった」という患者さんは多いのですが、手術というと「絶対に嫌」という人もいます。そういう方には巻いた爪をワイヤで矯正する方法が広く行われています。ただし、これは根本治療にはなりません。半数近い患者さんはワイヤを外せば、再び巻いてきてしまいます。

 その後のことを考えて、私は手術やワイヤ治療を受けた患者さんにも、インソールを使って足裏のアーチをサポートするようお願いしています。

水井睦

水井睦

みずい整形外科院長。日本整形外科学会認定専門医、同会認定脊椎脊髄病医、同会認定リウマチ医、日本体育協会認定スポーツドクター。1995年北里大学医学部卒業。横浜市立大学医学部整形外科入局。大学病院、国立病院などを経て、2005年から東京・祐天寺にて開院。

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