血液の細胞成分である白血球の中に、病原体を攻撃・排除する「リンパ球」があります。
白血球の20~40%を占め、1個の大きさが6~15マイクロメートル(マイクロ=1000分1ミリ)のリンパ球の寿命は種類や環境で異なり、数日から数カ月、時には年単位のものもあります。
この中で重要なものは3種あり、ひとつはナチュラルキラー細胞といわれる「NK細胞」です。体内をパトロールしながら、樹状細胞などの指令なしに悪性腫瘍やウイルスに感染した細胞と闘います。これを自然免疫反応といいます。
また、病原体や異物などに接触することで身につく獲得免疫反応を引き起こすのは、細胞免疫を担う「T細胞」(Tリンパ球)と液性免疫を担う「B細胞」(Bリンパ球)です。樹状細胞やマクロファージ(貪食細胞)が、ウイルスなどの敵を認識した指令をヘルパーT細胞(Th1)に出すと、インターフェロンやサイトカインなどが放出され、細胞傷害性「T細胞」が活性化されて、ウイルス感染した細胞やがん細胞を死滅させます。NK細胞もこの獲得免疫反応に関わります。
「MHC(主要組織適合遺伝子)クラス1」と呼ばれる細胞膜表面の分子で細胞の性格が分かるので、T細胞はこれで正常の細胞と悪性腫瘍や感染細胞とを区別できます。MHCクラス1分子が少なかったり、欠如している場合は、T細胞の攻撃から免れる可能性もありますが、NK細胞がこれを破壊します。ナチュラルキラー細胞という名称は、MHCクラス1分子がない異常細胞を殺すために、前もって刺激される必要がないことから名づけられました。
「B細胞」は液性免疫を担います。細菌やウイルスのような異物が侵入しますと、ヘルパーT細胞(Th2)の指令で免疫グロブリン抗体を作り、病原体を攻撃します。
風邪の原因となるコロナウイルスには細胞性免疫が働きますが、新型コロナウイルスのSARSやMERSではT細胞そのものまで破壊されることがあります。新型肺炎ウイルス感染ではT細胞活性はあるようですが、重症化するとSARSと同じようにすべてのリンパ球が傷害されます。
「T細胞」と「B細胞」の機能は、こればかりではありません。活性化後に、さらに「メモリー細胞」としての機能も備えています。個々の特異的病原体に遭遇したことを記憶に残し、再び同じ病原体を発見すると、強力かつ素早い応答を開始します。
全てのリンパ球は、前駆細胞(幹細胞から発生して体を構成する最終分化細胞へと分化できる細胞)が起源になります。
骨髄などから未熟なまま産出したリンパ球は、やがてリンパ節(わきの下、脾臓、足の付け根など)に移動し、そこで増生、成熟しながら待機し、体に侵入してくる病原体に闘いを挑むのです。
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