骨と筋肉の疑問に答える

草野球で顔面にボール当たり眼窩底骨折…どのようなケガ?

桃田賢斗
桃田賢斗(C)日刊ゲンダイ

 友人が草野球で顔面に軟式ボールが当たり、眼窩(がんか)底骨折と診断されました。どのようなケガですか? (30代男性)

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 目を強打したときにみられる特殊な顔面骨折を言います。目を動かすと、痛みが出たり、物が二重に見えたり、目を上げられなくなったり、血の混じった鼻水が出たり、頬の皮膚感覚が鈍くなったり、目がくぼんだり、吐き気がしたりなどの症状が出ます。

 眼球が入っている骨のくぼみを眼窩と言います。その入り口は頑丈な骨でできていますが、その奥にある眼窩の下壁の眼窩底は薄い骨でできています。そのため、ボールが当たるなど強い衝撃を受けても目の周りの骨は持ちこたえられますが、眼窩底は骨折してしまうことがあるのです。これが眼窩底骨折です。眼窩底の周辺には眼球の動きを担う重要な神経や筋肉、血管などが走っているため、それらが障害されることで、さまざまな症状が出るというわけです。

 バドミントンの男子世界チャンピオンで東京五輪で金メダルが期待されている桃田賢斗選手がマレーシアでの交通事故で受傷したことでこの病気を知った人も多いと思います。桃田選手は交通事故後の練習で「高い打球を見上げた時、シャトルが二重に見え、違和感があった」と話されていたそうです。恐らくは、日常生活での眼球の動きでは特に痛みや違和感はなかったものの、練習で高速のシャトルを追うときに症状が出る程度の軽症の眼窩底骨折だろうと推測されます。

 本来、CTやMRIといった画像診断により眼窩底骨折は確認できますし、眼窩の周りにある神経や血管、筋肉の障害の程度を知ることはできます。日本の医療水準なら少なくとも眼窩底骨折を見逃すことはないでしょう。ですから、桃田選手の場合は、軽度の骨折は分かっていたものの、手術まで必要ではないのではないか、との判断をしていたのだと思います。

 眼窩底骨折で物が二重に見えるなどの視力障害が出ても、時間の経過とともに徐々に改善することは少なくありません。骨折による腫れが引いたり、出血が治まったりするからです。それでも症状が改善せず日常生活に支障がある場合は、全身麻酔による手術が行われます。桃田選手もその後手術を行っています。

 手術は基本的に折れた骨を元に戻して固定するのですが、薄い骨がばらばらに砕け飛んでいることも多いので、自分の他の場所の骨やシリコーン、セラミック、チタンなどの人工物を移植することになります。

水井睦

水井睦

みずい整形外科院長。日本整形外科学会認定専門医、同会認定脊椎脊髄病医、同会認定リウマチ医、日本体育協会認定スポーツドクター。1995年北里大学医学部卒業。横浜市立大学医学部整形外科入局。大学病院、国立病院などを経て、2005年から東京・祐天寺にて開院。

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