10年に及ぶ長期間、腰周辺の激痛に耐えてきた「一般社団法人・日本ビジュアル著作権協会」(東京・飯田橋)の曽我陽三理事長(70)は、マッサージ店や整体治療院に通院していた。保存療法だ。
しかし、継続するあまりの痛みに、骨にひびが入っているか骨折でもしているかと疑った。
学生時代、空手部に所属し、地獄のような特訓を重ねた。卒業後も黒帯を締めて、50歳ぐらいまで後輩指導に当たっていた。
腰痛は、若い時代、こうした無理な運動を続けてきたことが要因と自らを納得させていた。
そしてついに我慢の限界がやってきた。一昨年、会社から近い都内の総合病院を訪ねた。
問診に始まりMRIなどの検査を受けると、担当医師は、背骨の画像を見せながら、「痛みの原因は『脊柱管狭窄症』です。『すべり症』(背骨の変形)もあります。根治治療は手術しかありませんね」と言う。
背骨がS字のように曲がっている画像に驚く。
「手術は怖い。絶対嫌だと思いました。ただ、痛くて眠れないので、強い睡眠薬を処方されて帰ったわけです」(曽我氏)
この時、すぐに手術を受けていたら、「脊柱管狭窄症」の手術は通常、1~3時間程度といわれている。
しかし、曽我さんが手術室に入ったのはそれから遅れること1年半後の昨年9月で、その間も症状が急速に進み、10時間に及ぶ難しい手術になった。
手術を行う2年ほど前まで体重が73.4キロもあった。それがわずか2年間で57キロまで落ちてしまう。頬もこけて、社員たちによく笑顔でジョークを飛ばしていたあの面影も消えていた。
たまに会った友人たちから、「がんではないか」と、心配されたという。
寝ても覚めても腰周辺に激痛が走る。痛みで寝返りも打てない。一睡もできない日が続いた。
食欲もなくなり、休みなく押し寄せる拷問のような激痛に、歯を食いしばって耐える日々。体重が落ちて当たり前である。
昨年9月、杖を頼りに出社してきた曽我さんの姿を見て社員たちが、入院を強く勧めた。
「なんの! これしき」と、相変わらず強気の発言を繰り返した。入院のきっかけは、トイレである。便座に座ったまま動けない。万事休すだった。
社員は病院に駆け付け、車椅子を借りてきた。
少しむずかる曽我さんを半ば強制的に車椅子に乗せ、病院に運び込む。脊柱脊髄外科の担当医が曽我さんを緊急入院させたのだ。
病の克服は患者に聞け