病気を近づけない体のメンテナンス

血管<上>老化を進める“4悪”とは…すべて揃えばリスク81倍

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 人体の隅々まで張り巡らされている「血管」も、加齢とともに老化が進行していく。それが「動脈硬化」で、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な病気を引き起こす。国際血管健康学会(ISVH)理事で「信濃坂クリニック」(東京都新宿区)の高沢謙二院長(東京医科大学名誉教授)が言う。

「血管の老化を進める重要な危険因子は、『高血圧』『糖尿病』『脂質異常症』の生活習慣病と、『喫煙』の4悪です。このうち1つあれば心筋梗塞や脳梗塞の危険度が3倍高まります。そして、この4悪は互いに悪い影響を及ぼし合うので、2つ重なれば3×3で9倍、3つなら27倍、4つなら81倍に高まると思ってください。逆にいえば、この危険因子を1つでも減らせば、危険度を3分の1にすることができるのです」

 生活習慣病にならない毎日の生活の仕方、すでになっていてもその病気を管理・コントロールすることが動脈硬化を進行させない重要なポイントになる。そして、4悪の中でも最も患者数が多いのが高血圧だ。血圧管理のために、ぜひすぐに始めるべきなのは毎日家庭で血圧を測ること。血糖値やコレステロール、中性脂肪などの数値は血液検査でしか分からないので、年1回の健診が大切になる。しかし、血圧だけは電子式の自動血圧計があれば、家庭で定期的に測れるので管理しやすい。

 日本高血圧学会のガイドラインでも2014年以降は、診察室血圧と家庭血圧に差が出た時には、家庭血圧を採用して診断・治療に当たるとして重要視している。病院で測る診察室血圧は、緊張して血圧が高めに出てしまうからだ。

 血圧の基準値は、診察室血圧が「収縮期血圧(上)140㎜Hg/拡張期血圧(下)90㎜Hg」、家庭血圧が「上135㎜Hg/下85㎜Hg」。上下の血圧のいずれかがこの数値を超えると高血圧と診断される。

 家庭血圧計はいろいろな種類があるが、上腕の部分で測定するタイプであれば、ほぼ正確に測ることができる。手首や指で測るタイプは、人によって正確な数値が出ないことがあるという。

「ガイドラインでは、家庭血圧は起床時と就寝時の1日2回測ることを勧めていますが、1日1回、朝起きた時に測ればいいでしょう。また、1機会に2回測って、その平均を記録することを推奨していますが、より安静が保てて低い数値が出る傾向のある2回目を採用すればいいと思います。測定に慣れてきたら1回測って、前日と変わらなければ1日1回でもかまいません。あまり厳密にやろうとすると、かえってストレスになり、血圧を上昇させてしまいます。そして、注目するのは上の数値です。135を超えていなければ、まずは安心です」

 上の基準値が超えているならば、塩分を控えた食生活や肥満を解消する運動習慣などが必要になる。日本の成人男性の1日の塩分摂取量は平均11グラムとされている。血圧が高ければ、とりあえず塩分摂取量を1ケタ(9グラム)に抑えることを目標にした方がいいという。

 また血圧の数値から動脈硬化の程度を算出することもできる。それが太い血管の動脈硬化の度合いを示す「脈圧」と、細い血管の動脈硬化の度合いを示す「平均血圧」だ。脈圧の計算式は「上の血圧―下の血圧」。たとえば上120で下80であれば「40」となる。脈圧が50以上だと要注意、60以上ではかなり危険な状態という。

■下の血圧だけ降下は発症が近い

「よく患者同士で『上の血圧は高いままだが、下の血圧は下がってきたので、とりあえず安心』と喜んでいる会話が聞かれますが、それは大きな間違いで危険です。動脈硬化が進行して脈圧が増大すると、その分だけ下の血圧が下がっていくのです。喜ぶどころか、突然、心筋梗塞や脳卒中を起こす状態なのです」

 上の血圧が同時に下がってきたり、正常範囲であれば下の血圧が下がっても問題ない。つまり、下の血圧が正常かどうかは上の血圧で決まるのだ。また脈圧が40だとしても、上150、下110のような上下両方が基準値を超えていたら、危険な状態であることには変わりはない。

 平均血圧の計算式は「下の血圧」+「(上の血圧―下の血圧)÷3」。たとえば上の血圧が120で、下の血圧が80だった場合には、平均血圧は「93」になる。末梢血管の動脈硬化の程度を示す平均血圧は、脈圧よりも早く上昇し、100を超えると要注意という。

 次回は、血管を若返らせる食事の取り方と体操を紹介してもらう。

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