病の克服は患者に聞け

ヒトパピローマウイルス感染症<2>彼にどう話していいのか…

(C)日刊ゲンダイ

「ヒトパピローマウイルスに感染していますね」

 東京・新宿区内の総合病院で今年1月末、不動産会社に勤務する岡本昭代さん(仮名=40)がこう診断されたとき、「実は私、ヒトパピローマウイルスというのはどんな病気か全く知りませんでした。先生に病名を聞き返したほどです」と、岡本さん。

「感染原因のほとんどは性交です」と、説明を受けたとき、岡本さんは、性交を“成功”と思ったほど、ヒトパピローマウイルスには無知だった。

 検査を受ける前、できることなら担当医師は女性であることを望んだ。だが、診察をしてくれた医師は、若い男性である。岡本さんがヒトパピローマウイルスにまるで無知と分かると、懇切丁寧に説明をしてくれた。

 もともとは、母親に強く勧められた「子宮頚がん」の検査だった。

「細胞診で子宮頚がんは見当たりませんでしたが、子宮頚がんの細胞診で、約9割以上の患者さんに、乳頭腫というヒトパピローマウイルスが見つかっています。つまり、ヒトパピローマウイルスが、子宮頚がんの発生原因と思ってください」

 こうした説明の後に医師は、ヒトパピローマウイルスに感染しても自覚症状がないこと。セックス経験者の半数以上の女性がこのウイルスに感染すること。また、ヒトパピローマウイルスは、100種類以上あるが、感染した約半数は、自然(免疫作用)に排除されることなどの説明をしてくれた。

 岡本さんは「ヒトパピローマウイルスの感染者は、全員が子宮頚がんにかかるわけではありません、と説明されましたが、先生の話を聞いていて、気になることが2点ありました」と言う。

 1つ目は、ヒトパピローマウイルスは、自然に排除されることもあるが、約10%未満の確率でそのまま子宮にとどまるケースがあり、それが子宮頚がんのリスクを高めること。2つ目は、感染の原因がセックスにあることから、パートナーにも感染させてしまう危険性があることで、女性の場合は口や喉にも感染するが、男性に感染すると性器(尿道や陰茎)をはじめ、口や咽頭、さらには中咽頭がんを引き起こす可能性もあることだ。

 岡本さんは、3割負担の検診料約1万円を支払って帰宅した。

 母親には「子宮頚がんではなかった」とだけ報告したという。

「安心させたかったのです。ただ、ヒトパピローマウイルスの感染は、内緒にしました。問題は、いまお付き合いしている彼氏に、もう感染しているかもしれませんが、どのように話したらいいのか、苦慮しております」と言い、苦痛の顔を見せた。

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