専門医が教える パンツの中の秘密

陰部に薬疹が…「固定薬疹」の特徴は?ヘルペスとの違い

原因となる成分は患者によって異なる
原因となる成分は患者によって異なる

 頭痛が起こるたびに、陰部に2~3センチの紅斑や水ぶくれができるという人はいないでしょうか。または生理のたびにできる、風邪をひいたときにできるという人もいるかと思います。

 そのような人に共通するのは、頭痛や生理痛、風邪などを治すために「薬を飲んでいる」ということです。つまり、陰部にできた病変の原因は「薬疹(やくしん)」の可能性があるということです。薬疹とは薬の成分によってアレルギー反応を起こしてしまい、皮膚に炎症を起こしてしまう薬の副作用のひとつです。

 陰部に薬疹ができやすいのは「固定薬疹」と呼ばれるものです。特定の成分を含む薬を飲むと、数時間程度でかゆみや灼熱(しゃくねつ)感に続いて、2~3センチくらいの円形または楕円形の紅斑や水ぶくれなどの発疹ができます。口の周りや唇、陰部などの皮膚粘膜移行部や手足にできることが多く、原因となる薬を飲むと同じ部位に繰り返し同じ形の発疹が出るのが特徴です。

 口の周りや陰部に水ぶくれができることで、冒頭で述べたように患者さんは頭痛や生理痛のたびに、口唇ヘルペスや性器ヘルペスが出ると勘違いしやすいのです。私の診療経験からいえば、男性の患者さんの場合は亀頭部に発疹ができることが多いです。

 発疹は水ぶくれが破れてびらんとなりますが、原因の薬をやめてステロイド外用薬を塗っておけば治癒します。治った後は少し紫色がかった色素沈着が残ります。再発を繰り返していると、色素沈着も強く、発疹の数も範囲も拡大する傾向がありますので、固定薬疹を起こした薬は二度と使わないことが大切です。

 原因となる成分を含む薬は患者さんによって異なり、市販薬でも処方薬でもさまざまな薬で起こります。一般的には「総合感冒薬(風邪薬)」「解熱鎮痛薬」「抗生剤(抗菌薬)」などの頓服薬が多いようです。

 例えば、▼「アリルイソプロピルアセチル尿素」(バファリン、ノーシン、ロキソニン、アダム、セデスなど)▼「エテンザミド」(ノーシン、セデス、ドキシン、ナロンエース、セピーゴールドなど)▼「アセトアミノフェン」(バファリン、イブ、パブロン、ルル、コンタックなど)▼「ミノマイシン」(テトラサイクリン系抗菌薬)▼「クラビット」(ニューキノロン系抗菌薬)、などです。

 市販薬にはさまざまな成分が配合されています。原因成分を特定するには皮膚科で検査を受けるといいでしょう。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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