孫の顔が見えなくなる…「加齢黄斑変性」の知られざる怖さ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 見たい部分が見えづらくなる病気が、加齢黄斑変性だ。対策が遅れれば、失明に至る。たとえ失明を食い止められても、失った視力は元に戻せない。人生100年時代、最期まで人生を謳歌したければ、加齢黄斑変性にも気を付けたい。

 加齢黄斑変性は、病名に“加齢”と付くように、年を取るとリスクが高くなる病気だ。同じように加齢でリスクが高くなる目の病気には、白内障や緑内障があるが、これら2つの病気が比較的知名度があるのに対し、加齢黄斑変性はどんな病気か知らない人もいる。

「もともと欧米人に多い病気で、私が医師になった40年前には日本では加齢黄斑変性は珍しかった。ところが食の欧米化や高齢化で、いま加齢黄斑変性が増えています」

 こう指摘するのは、名古屋市立大学病院眼科部長で病院長の小椋祐一郎医師。加齢黄斑変性は、長年の酸化ストレスの蓄積と慢性炎症によって、網膜の中心部にある「黄斑」に障害が生じる。

「喫煙者や、家系に加齢黄斑変性の患者さんがいる場合、発症リスクが高くなります。しかし、加齢が最大のリスク要因であることを考えると、年を取ればだれでも発症する可能性があります」(小椋医師=以下同)

■片目でチェックしないと早期発見は困難

 加齢黄斑変性には2つのタイプがある。1つは「滲出型」で、脈絡膜という部分から新生血管(異常な血管)が発生し、それらが破れて出血したり、血液中の成分が漏れ出すタイプ。

 滲出型であれば、新生血管の成長を活発化させる物質VEGF(血管内皮増殖因子)の働きを抑える薬「VEGF阻害薬」を目の中に注射する治療法がある。光に反応する薬剤を体内に注射後、レーザーをあてて新生血管を退縮させる治療法を組み合わせるケースもある。

「VEGF阻害薬は、最初の数カ月は1~2カ月に1回、通院で注射を打ち、その後は3~4カ月に1回など期間を置いて注射を打ちます。2年ほどで新生血管がなくなる人もいれば、4~5年かかっても注射が必要な人もいます。早く治療を開始すれば、治療期間も短くなる可能性も高い。また、最近、臨床試験では3カ月に1回の注射で従来と同様の効果をもたらす新薬が承認されました」

 一方、もう1つのタイプは「萎縮型」だ。網膜の細胞が変性し、萎縮する。残念ながらこちらは治療法がなく、経過観察のみ。ただし、日本人には少ない。となると、治療法がある「滲出型」への対抗策としては、早期発見・治療に尽きる。

「加齢黄斑変性は一方の目に起これば、もう一方の目にも起こりやすい。しかし、ほとんどのケースで両方同時には発症しない。すると、一方の目に加齢黄斑変性があっても、もう一方の目が発症していなければ、正常な目で視力を補うので、異常に気付きづらい」

 チェックは、片目ずつ行う。方眼紙や窓のサッシなど格子状になっているものを片目で見た時、まっすぐな線がゆがんで見えたら要注意だ。進行すると、見たい部分が「ぼやけて見える」「不鮮明に見える」「暗く見える」といった症状も出てくる。50歳以上で発症しやすくなり、1年に1回はチェックすべきだ。

 もっと積極的にチェックするなら、眼底検査や光干渉断層計(OCT)を。眼底検査は人間ドックなどに入っていることがあるが、通常の健康診断には一般的に入っていない。OCTは眼科専門医がいるクリニックなどで受けられる。

 加齢黄斑変性によって「かわいい孫の顔が見えない」「新聞の読もうとしている部分がぼやける」「包丁で切ろうとしているところがはっきり見えず料理ができない」などと悩んでいる人は少なくない。後悔してからでは遅い。

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