病の克服は患者に聞け

ヒトパピローマウイルス感染症<4>「心配なのは子宮頸がん」

(C)日刊ゲンダイ

 目下、世界中を震撼させている新型コロナウイルスは、時期が来たらいずれ終息する。

 しかし、性感染症のひとつであるヒトパピローマウイルス(HPV)は、これといった治療法もなく、セックスを行う限り、消滅することはない。

 今年1月末、東京・新宿区内の総合病院で「ヒトパピローマウイルスの感染」と、診断されたOLの岡本昭代さん(仮名=40)は、担当医師から、「経過観察をしますので、3カ月後あたりにもう一度来てください、と言われました」と語る。

 初診からそろそろ3カ月を迎えようとしているが、岡本さんは病院を訪ねることに二の足を踏む。

 前回、子宮頚がんの細胞診で、子宮がブラシのようなもので削られたとき、男性医師から、局部を診られたことに恥じらいを感じているのだ。

 さらに勤め先の不動産会社の同僚たちに、再三、有給休暇を取ることで、病名が知られてしまうことも恐れている。  

「ただ不安は、現在、お付き合いをしている彼に、感染させてしまう心配がありました。そしてもうひとつは、『子宮頚がん』です」

 20歳から40歳までがピークとされる「子宮頚がん」は、原因の9割がヒトパピローマ感染といわれている。

 近年急増している「子宮頚がん」は、子宮の入り口付近に発生し、パピローマウイルスと同様に、初期段階では症状がほとんどない。

 しかし、病態が進行すると、月経時期でもないのに、性交時に出血し、おりものが増えたり、さらに重度になると下腹部、腰の痛み、尿や便に血が混じる症状を起こす。

 厚労省の統計によると、毎年、1万人を超す女性が「子宮頚がん」に罹患し、二千数百人が亡くなっている。

「初期の段階なら治療も、1時間ほどの手術で終わるそうですが、“進行すると厄介ながんになり、最悪、妊娠もできなくなります”と説明されました。でもこのウイルスの感染は繰り返されるようで、その90%は、免疫作用で自然排除するようです。私はそれに期待をしているのですが……」(岡本さん)

 岡本さんは一人娘で、老いた両親は一日も早い、孫の誕生を望んでいる。

 しかし、孫の誕生まで、まず再婚という高いハードルを越えなければならない。

 しかも、妊娠可能な適齢期が迫っている、ぎりぎりの年齢である。

「少し焦りもあるけど、親が自由に育ててくれた分、せめて孫の顔を見せてやりたいと思っています。だから子宮頚がんなどにかからないように、また病院を訪ねます」

 岡本さんはそう言って笑顔を見せた。 (おわり)

関連記事