“いきなりエイズ”増加の可能性 コロナで医療体制にひずみ

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染症の拡大は医療体制にさまざまなひずみを起こしているが、エイズウイルス(HIV)感染症の無料検査にもその波が及んでいることがわかった。全国の保健所ではHIVの無料・匿名検査と相談を行っているが、新型コロナウイルス関連業務の増大により一部の保健所ではその活動を休止しているという。

 沖縄県では2月から県内の保健所での活動を休止。厚労省と公益財団法人エイズ予防財団が2006年以降、毎年6月1~7日を「HIV検査普及週間」と定め、全国的キャンペーンを実施しているが、沖縄県はその延期も決めた。

 通常の医療機関の場合は数千円の検査費は自己負担となり、記名も必要となる。そのため、保健所で行う無料・匿名検査は感染拡大防止の武器となっている。その武器を短期間とはいえ、使えなくなる影響は大きい。日本性感染症学会の功労会員を務め、わが国における性感染症予防・治療を牽引している、「プライベートケアクリニック東京」(東京・新宿)の尾上泰彦院長が言う。

「一番の心配は、保健所での検査が休止することで、早期発見ができずに、エイズ発症後にHIV感染を知る、“いきなりエイズ”の患者さんが増えることです。ご存じのように、HIVに感染してもいまは薬によってエイズ発症を抑えることができますが、発症してからの治療はむずかしくなります」

 国内のエイズ発生動向によると、HIV感染者とエイズ患者を合わせた新規報告者数は2018年に1317件。「いきなりエイズ率」は例年30%程度で推移しているが、今年はその割合が上昇するかもしれない。

「国内のHIV陽性の報告の約45%が保健所などの検査施設で、残り55%が医療機関です。検査施設休止の影響は大きいでしょう」

 なかには民間の郵送検査を利用しようとする人がいるかもしれない。しかし、民間の郵送検査には検査精度や個人情報管理などの基準がなく、国の承認制度もない。偽陽性が出る可能性もある。

「陽性が出たときはその後、検査機関や医療機関で、必ず『確認検査』を受ける必要があります。感染の不安を取り除きたいなら、最初から保健所や医療機関で検査を受けた方が確実です。保健所で検査が休止されていたとしたら、勇気を出して医療機関を受診することです」

関連記事