慣れないテークアウトで増加中… 危ない食中毒はこう防ぐ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス対策の影響で、食事のテークアウトや宅配が急増した。それに伴って増えつつあるのが「食中毒」だ。新たにテークアウト販売を始めて慣れていない飲食店も多く、気温や湿度が上昇する季節を迎えて衛生管理の不備が懸念されている。

 東京都福祉保健局の食中毒発生状況によると、今年の食中毒患者数は448人で、昨年同時期の379人を上回っている。5月を見てみると、今年は62人で昨年の20人から大幅増。原因施設別発生件数では、昨年はゼロだった仕出し弁当で198人、総菜で10人の患者が発生している。

■とにかく「細菌を増やさない」こと

 実際、5月中旬には神奈川県内の飲食店でテークアウトした弁当を食べた14人が腹痛、下痢、吐き気などの症状を訴え、食中毒と認定された。気温に加えて湿度も上がるこれからの季節は、より注意が必要だ。

 東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎氏(感染免疫学)が言う。

「食中毒には、冬場に増えるウイルス性のタイプと、夏場に多くなる細菌性のタイプがあります。これから夏にかけて、テークアウトで気を付けなければならないのは細菌性の食中毒で、中でも、黄色ブドウ球菌、ウェルシュ菌、カンピロバクターが多く見られます」

 黄色ブドウ球菌は人間や動物の皮膚や消化管などに常在する菌で、自然界に広く分布している。食品中で増殖すると、エンテロトキシンと呼ばれる毒素を産生して食中毒の原因になる。手指からの汚染が多く、弁当やおにぎりで起こる食中毒の代表的な原因菌だ。

 ウェルシュ菌も人間や動物の腸内、土や水の中にも生息するありふれた細菌で、とりわけ牛、鶏、魚が保菌している場合が多い。不適切な温度下や長期の保存、加熱処理不足で発生し、作り置きのカレーやシチューで起こる食中毒の原因になる。

 カンピロバクターは、牛、豚、鶏といった家畜をはじめ、イヌやネコなどのペット、野鳥や野生動物の消化管内に生息している。とりわけ鶏肉の汚染率が高く、近年、日本で発生している細菌性食中毒の中で発生件数が最も多い。一般的な加熱調理で死滅するが、生食など加熱不足のまま食べる機会が増えたことが増加の原因だといわれている。

 こうしたどこにでも生息している細菌による食中毒を防ぐには、とにかく「細菌を増やさない」ことを心がけたい。

「食中毒の原因になる細菌のほとんどは、①温度、②水分、③栄養の3つの条件が揃うと発生します。室温20度で増殖し始め、30~40度で増殖スピードが一気に速くなる。味やにおいでは気付かなくても増殖は進んでいて、短い場合は10分程度で増えていきます。ですから、テークアウトの飲食物は持ち帰ったら時間をおかず、すぐに食べるのが鉄則です。調理されてから2時間以内には食べきることを意識してください」(藤田氏)

■冷蔵庫でも安心できず

 食べきれないからいったん冷蔵庫で冷やしておけば大丈夫だろう……と考えるのも危ない。細菌の多くは10度以下で増殖スピードが遅くなり、マイナス15度以下で停止するが、細菌がすべて死滅するわけではない。室温に戻ると再び一気に増殖するケースもあるというから要注意だ。

「テークアウトに慣れていない店では、長時間の流通を前提にした管理を徹底しているわけではありません。普段と同じように手袋をせずに調理していたり、運搬の時間を考慮していないメニューもあります。テークアウトした食品の加熱調理に不安があるなら、温め直すのも予防法のひとつです。また、腸内環境を整えて免疫力をアップさせておけば、食中毒を防ぎます。普段から腸内細菌のエサになる食物繊維を多く取っておきましょう」(藤田氏)

 ウイルスだけでなく、細菌への対策も万全にしたい。

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